2011年02月26日

蕪村句集

蕪村が勢いづく。
角川ソフィア文庫から『蕪村句集』(2011年2月)も刊行された。
玉城司さんの訳注である。

1000句を選んだ新編集。
選句方針は、
1 蕪村の生涯を発句によってたどることができるもの。
2 蕪村句の特色をそなえているもの。
3 現代人から見て魅力的なもの。
4 四季いずれにも偏らずに、四時の楽しみを見出すもの。
ということである。

注では、句の背景が理解できるように、「参考」として蕪村以前・同時代の類似句・同趣向句などを載せてくれていて、これが大変ありがたいものである。芭蕉全句集に次ぐ企画だが、読みやすくてありがたい。
来年度授業で蕪村を読もうかなと思っているところで、またまた強力な援軍である。k
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2011年02月24日

蕪村余響

藤田真一さんの新著『蕪村余響』(岩波書店、2011年2月)が刊行された。
前著『蕪村 俳諧遊心』(若草書房)から12年。この本の副題も四字タイトルだった。
そういえば論文も「嵐山風雅」など蒙求題風のものが多い。そこに藤田さんの強い美意識が感じられる。

さて本書は前著の論文集と違って、その母体がエッセイ的な文章である。読みやすく、すっと入っていける。しかし、新たな蕪村像を提出しようとする意欲に満ちたものだし、細心な計算を感じさせる構成である。「市井での穏やかな暮らしがはぐくんだ創作活動の深奥にせまる」という帯文が、その特徴をよくあらわしているようだ。まだ頁をめくっただけだが、その文面から、藤田さんの美意識が伝わってくる。ひらがなが多い。遊びをさりげなく差し挟む。しかし、俗に落ちない。蕪村の明るさ、華やかさに通じる彩りがある。

「秋成の悪たれ口」という章があり、蕪村と秋成の交流に触れている。ふたりの微妙な距離感を巧みに描き出している。非常に参考になった。

 作品を分析するというより、ありのままの蕪村によりそうように書くという趣旨に大いに共感する。これを秋成でもやるべきだなあと思った次第である。
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2011年02月22日

正徹物語

「幼かりし頃、七月に星に手向くるとて、一首歌を詠みて、木の葉に書き付け侍りしが、歌の初めなり」
 正徹が初めて歌を詠んだ日のこと。小川剛生訳注『正徹物語』(角川ソフィア文庫、2011年2月)で読める。最近歌論を読もうとしているところだったので、ありがたい。解題は小川さんらしい無駄のない的確な文章。小川さんが注をしてくれた『正徹物語』が文庫本で読めるというのは、素晴らしいこと。和歌の奥深さを味わえそうです。
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2011年02月20日

花咲一男翁

『花咲一男翁しのぶ艸』という本が太平書屋から出ている(2011年2月)。同年代の前田金五郎氏をはじめ、武藤禎夫・肥田晧三・中野三敏・延廣眞治・揖斐高など28名の方の追悼文が収められる。皆異口同音に花咲氏の無欲恬淡な人柄と江戸についての博覧強記ぶりを語っている。まさに「伝説の人」である。もちろん私などは単に江戸風俗研究家としてのご高名を仰ぐのみであるが、興味深く読ませていただいた。

 たとえば佐藤悟さんは「学問的には種彦や喜多村(竹+均)庭の系譜を継ぐもの」で「このような十九世紀に確立された学問を継承できる人はいない」と言われる。こういう純粋な江戸を愛する学問は失われて行き、一知半解のいい加減な本や論文が出ることを嘆く文章がいくつか見られた。ここに追悼文を書いているような方は、それを言う資格のある方であるが、私などは一知半解どころか無知無解を自認しているので、そういう現状批判の文章を拝読するのは正直少しつらいものがある。マア私などは一生…。別にすねているのではなく本当にそう思う。せめては、知らないことを知ったふうにいうのだけはやめようと思うばかりである。

 加藤定彦氏や延廣先生の文章に、いったん本を賜ったのに、また必要になったので返してほしいというようなことを言われたという話が載っていたが、これはスゴイ話だなと思う。こういう本の往来の在り方に、「本物」を感じる。

 唐突だが忍頂寺務なども「十九世紀型学問」の人であろう。延廣先生が賜った本として務の『清元研究』の名が挙がっていたのが、私としてはなんだか嬉しい気持ちがする。

 そういえば今日、忍頂寺文庫の目録版下が整備されて入稿の運びとなった。PDF入稿のため、最後の仕上げに難渋したが、同僚の合山林太郎さんのご尽力で締め切りまでになんとか入稿出来た。今年度中に刊行される予定であるが、この件についてはまた、改めて御報告したい。
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2011年02月18日

アンケート

下記エントリーに記した、日本近世文学会秋季大会アンケートですが、まだ3分の2以上の方からご返事をいただいておりません。運営上是非ともご回答いただきたく、これからでもハガキご投函のほどよろしくお願いいたします!
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2011年02月08日

日本近世文学会の皆様へ

こちらを読んでくださっている日本近世文学会の会員の皆様へ。

 お手元に『近世文藝』93号が届いているかと思いますが、今回、平成23年度秋季大会における学会初の試みに向けて、アンケートを実施しております。
 
 このアンケートは大会運営にとって、きわめて重要なアンケートですので、お手数ですが、必ず事務局宛の返信用葉書にご記入の上、期限(2月14日)までに届きますようにご投函をお願いいたします!。

 よろしくお願い申し上げます。
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2011年02月04日

はりのムシロ

卒業論文・修士論文の口頭試問が終了。今年は、22本(うち修論10本)よみ、15本審査に関わる。今日は9人。いつも思うのだが、針のムシロなのは寧ろ此方である。自分の指導している学生が質問を受けている時などは、内心冷や汗たらーり。

他の先生方の蘊蓄や考え方、方法論がきける滅多にないチャンスでもある。勉強になりますなあ…。



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2011年02月03日

江戸の紀行文

板坂耀子さんの『江戸の紀行文』(中公新書、2011年1月)が刊行された。

板坂さんといえば、江戸の紀行文研究の第一人者である。これまでも、数多くの著作があるが、今回の本は、一般向けに江戸の紀行文の面白さを伝えようとする意欲に満ちた本と見える。

板坂さんは、多分あまり知られてはいないが、かつて数十万部というベストセラー少女小説を書いた作家でもある。鳩時計文庫(これまたマイナー)の『従順すぎる妹』などはQ大国文研究室を舞台にした、I先生らしき方も登場する傑作である。そういうわけで、文章のノリが普通の研究者と違う。読みやすいのである。これは新書とマッチする。

最初に、『奥の細道』は江戸時代紀行文の代表作ではなく、異色作だということをバーンという。では代表作は? 『木曽路記』(貝原益軒)・『東西遊記』(橘南谿)・『陸奥日記』(小津久足)なのである。それはなぜか?紀行文がそれまでの中世的な感傷的なものから、明るく前向きで情報提供的になるのが江戸の紀行文の特徴。芭蕉はむしろ中世を引きずり、または真似している。江戸の紀行文の大部分はそうではないというのである。

たしかに乏しい読書範囲で考えても、江戸の紀行文の書き手はなんだか楽しそうである。秋成はそういう中世的な芭蕉を、「いつの時代の人?」と皮肉っているが、でも秋成の『秋山記』もちょっとしめっぽいのですよね。ともあれ、江戸紀行文の格好の入門書である。あれだけ膨大にある紀行文を読みつくしている板坂さんにしか、この本は書けないのである。

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