2012年03月31日

まとめてご紹介します

今年度もいよいよ今日で終了。それにしても皆様の生産力の高さには脱帽!私はといえば論文生産力どころかブログ筆力も低迷しています。下記は、本来はひとつひとつ紹介すべきものですが、このままではズルズルいきそうなのでまとめて。

 まずは、池澤一郎さんの大著『雅俗往還』(若草書房、2012年2月)。すでに的確なレビューが、いくつか出ているようで、私の出る幕ではないが、池澤さんの主意は、「あとがき」にわかりやすく述べられている。図式的な雅俗論を排し、雅俗両端を行き来する文学表現を把捉しようとする。雅俗を論じようとするときに、今後必読の研究書になることは間違いなかろう。本のタイトルが秀逸である。

 浅野三平先生の『鬼神論・鬼神新論』(笠間書院、2012年2月)。霊犬ジローの話は文庫本で拝読したが、演習でも鬼神論を読んでいたのですね。丁寧な注と現代語訳。

 湯浅邦弘さんの『論語』(中公新書)。この2,3年で10冊くらい本を出されているが、このたびの本は、きわめてスリリング。ポイントは孔子の夢の解釈。『論語』に孔子の絶望が書かれている、そしてそれは隠蔽されてきた。孔子を聖人に押し上げるために。大胆な読みの提言。

 工藤重矩先生の『源氏物語の結婚』(中公新書)。平安時代の結婚制度は一夫一妻制。もう30年ちかくこれを唱えられているのに、いまだに平安朝は一夫多妻制だという解説をよくみる。この新書で、工藤先生の説も一般に認知されることになるだろう。明快ですもの。その前提で読めば『源氏物語』のなんとわかりやすいこと。

 佐藤勝明さんのNHKラジオテキスト『芭蕉はいつから芭蕉になったか』(4−6月のテキスト)、田中仁さんの『江戸の長歌』(森話社、2012年3月)。これらも読みたいと思いつつ、積ん読状態です。年度末なので、抜刷や報告書も各方面からいただいているんですが…。

 来年度は、すこしは読み書きの量を増やしたいと思います。
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2012年03月30日

懐徳忌:五井蘭洲の和学についての講演

懐徳堂記念会では、懐徳堂の歴代学主の法要を行い、懐徳堂にかかわる講話を聴く、「懐徳忌」を、毎年4月の上旬にとりおこなう。
今年は、下記の要領で行われる。興味のある方はぜひご参加下さい。

◆日 時:平成24年4月7日(土)
◆場 所:誓願寺(大阪市中央区上本町西4丁目)
    (大阪市営地下鉄谷町九丁目下車、上町筋を北に徒歩10分)
◆内 容:11:00〜法要・墓前祭 11:30〜講演(約一時間の予定)
◆申 込:懐徳堂記念会事務局まで御連絡ください。
     電話・ハガキ・FAX・メール何でも結構です。
     〒560-8532
     大阪府豊中市待兼山町1-5
     大阪大学文学部内
     Tel:06-6843-4830
     Fax:06-6843-4850
     E-mail:kaitokudo(アットマーク)let.osaka-u.ac.jp
◆講話:蘭洲の和学−『古今通』を中心に−
    講師、西田正宏(大阪府立大学地域連携機構教授)

 五井蘭洲は、懐徳堂の初期の助教として知られているが、朱子学に励む一方で『古今和歌集』をはじめ『万葉集』や『伊勢物語』など多くの日本の古典にも注釈を施している。本発表ではその中でも特に『古今集』の注釈書である『古今通』を中心に蘭洲の和学について考えることにしたい。
 『古今通』の伝本は大きく二系統に分かれる。蘭洲の言説がほとんどそのまま残されているものと加藤景範を中心とする門弟によって刪補されたものである。その刪補は蘭洲自身が門弟に依頼したものでもあったので、従来はこの門弟の手の入った伝本(刪補本)が最終形態を伝えるものだと見なされてきた。確かにそれはそうであるけれども、それぞれの伝本を詳細に比較・検討してみると、門弟の手の入った伝本は、蘭洲自身の特徴とも言うべき言説がことごとく削除されていることが確認される。つまり刪補本を見ているだけでは、蘭洲の和学の方法や特徴は掴めないのである。
 その点を確認したうえで、『古今通』に引かれる先行注釈書なかでも、蘭洲がもっとも影響を受けたと思われる契沖の『古今余材抄』との関係について考える。蘭洲は契沖の注釈の採るべきは採り、批判すべきは批判している。蘭洲は、契沖の学芸を本居宣長よりもはやく評価していたのである。しかし、先にも述べたように刪補本では契沖への批判はことごとく削除されており、従来はその点はあまり注意されてこなかった。このことは契沖の学芸の享受史という視点からも注目されるとともに、ひろく上方の学芸史を考えるうえでも看過できないと思われる。
 最後に『古今通』だけではなく、できれば他の注釈類も考察に加え、五井蘭洲の文学観にも言及できればと考えている。

 
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2012年03月28日

懐徳堂ゆかりの絵画

 阪大リーブル懐徳堂シリーズ第5弾、奥平俊六編著『懐徳堂ゆかりの絵画』(2012年3月)が刊行された。昨日の懐徳堂記念会の役員会で初披露された。運営委員の私も陪席しており、1冊頂戴しました。

 開いてみて驚いた。口絵になんと、前のエントリーで話題にした、履軒秋成合賛鶉図。美しいカラー写真で掲載されている。当然ながら鶉図のことについても、奥平先生の興味深い所見が記されている。なーるほど!ということが書いてあります。買って読んでね!(そういえばアーカイブ講座を聴講に来られていたが、展示解説の時間では、解説者に変貌していた。その時にそんなことを言ってたような)

 本書は、おびただしい図版を用い、懐徳堂の学主であった人々の絵画や、懐徳堂に深くかかわった、谷文晁・蔀関月などの画、また木村蒹葭堂と懐徳堂の関係についても触れる。懐徳堂についての本はたくさん出ているが、絵画に絞った本は、初めてであろう。非常に貴重な成果である。
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履軒秋成合賛鶉図について書きました。

 柿衞文庫の「神医と秋成」展も終了したが、どれくらい入場者があったのかしらん。そこでのゲスト展示のひとつだったのが、このブログでも何度か紹介した、中井履軒上田秋成合賛鶉図である。昨年77年ぶりに出現、懐徳堂記念会に寄贈されたものである。

 これについては昨年11月の懐徳堂アーカイブ講座で、美術史の濱住真有さん、中国哲学の池田光子さんとともに、詳細な紹介および展示解説をしたのであるが、それをほぼ活字化したのが、飯倉洋一・濱住真有「中井履軒・上田秋成合賛鶉図について」(『懐徳堂研究』第3号、2012年2月)である。

 この鶉図の両者の賛は、本紙のまわりの中回しに、またぐように書かれているところが珍しい。鶉は不常住の象徴。履軒も秋成も頻繁に引っ越しをしているところで、秋成など「鶉居」の号があるくらい。鶉の気持ちがよくわかるとばかりの賛である。

 共著者の濱住さんは大阪大学の日本東洋美術史研究室の助教さんで大雅の研究者。この画賛については美術史の奥平俊六先生・橋爪節也先生にいろいろとおそわったのだが、その時濱住さんも同席、写真撮影などされていたが、さらに濱住さんは「もう少し調べてご報告します」と言われ、しばらくして膨大な資料を抱えて来られ、詳細にいろいろと説明してくださった。だが、あまりにも詳しく、また専門的でもあったので、こりゃ私では消化しきれんわと思い、いっそ共著でお願いできないかとお誘いしたところ、ご快諾を得たという次第である。おかげで絵の部分の説明が、素人説明でなくなってありがたかった。

 ちなみに『懐徳堂研究』は、大阪大学文学研究科懐徳堂研究センターの出している雑誌。ちなみに口絵は鶉図のカラー写真。

 ちなみに、抜刷は、まだごく一部の方にしかお渡ししていません(スミマセン。最近送るのさぼっています)。
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2012年03月27日

花袋とゾラ

卒業惜別会の二次会の宴席で、好色物を卒論で扱った学生を前に、某先生と「好色物を教えるってどうよ」という話題になった。「いやあ、近代文学の先生が『蒲団』を教えてるってことを考えると、なんてこたないすよ」。「そうだねえ。『蒲団』はむずかしそうだ。あの最終場面の気持ちがわかるともいいにくいし」ぶつくさぶつくさ、と語り合っているうちに、最近拝読した、柏木隆雄先生の論文を思い出した。

 「リアリズムの翻訳 翻訳のリアリズム」というご論文(井上健編『翻訳文学の視界』所収、2012年1月)であるが、そこでは、花袋が自分の体験のみならず、ゾラの『作品』という小説からヒントを得たことを明らかにしている。花袋は「女のなつかしい油の匂ひと汗のにほひ」、ゾラは「シーツから立ち上がる若い、この温かさとこの匂い」。そればかりではなく、状況もかなり似ている。しかも、『蒲団』発表の前年、「明星」に掲載された馬場胡蝶の翻訳によったのではないかという。そこには、matelasを、なんと「臥褥(ふとん)」と訳しているのである! また全体的に胡蝶が訳すと、ゾラの場面が妙に日本的で猥雑っぽくなり、『蒲団』の世界に近づくのである。これはご説の通りであろう。

 ゾラといえば、学生のころ『居酒屋』という小説を読んで、強烈な印象を受けたことがあったが、田山花袋とは雰囲気ちがうじゃんと思っていた。しかしここに馬場胡蝶を介在させると、おお、翻訳の力ですね。
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2012年03月20日

朝日新聞に「神医と秋成」展の紹介が載る

19日、朝日新聞大阪本社版夕刊の文化欄「単眼複眼」のコーナーに、「秋成ワールドの魅力」と題して、柿衞文庫の「神医と秋成」展のことが紹介されている。写真も2点掲載され、わりと大きな扱いである。記事は、つかみで「吉備津の釜」ラストシーンの話から入り、宣長との論争に触れ、その現実主義・合理主義は近代人の先駆けでに思えるとする。そのあとの文章がさすが新聞記者である。

 「そう考えて見直すと、秋成が創出した底なしの異様な恐怖は、自我を得た代わりに、神仏や絶対者を失って宙ぶらりんになった現代人の不安にも通じるのではないか。(このあと無腸号のことを述べ)そんな秋成の「甲羅」の下のやわらかな内面がわかる企画展が、兵庫県伊丹市の柿衞文庫で開催中だ。」とここから紹介がはじまるのである。この転じ方がなかなか上手だ。

 この記事を書いた佐伯記者は、たまたま我々「近世上方文壇における人的交流の研究」チームが同文庫を訪れた際に、取材に来ていた。文庫の方に紹介され、そのあと、ちょっとメールのやりとりなどもあったが、すごく勉強されたようである。佐伯さんもどうやら秋成に惹きつけられたらしい。

 展示も、もうあと5日間しかない。この記事で、観覧者が少しでも増えてくれたら嬉しいのだが。
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2012年03月11日

神医と秋成展 その5 毎日新聞

「神医と秋成」展のことが、毎日新聞に掲載されました。例によって無断転載いたします。

企画展:「目の治療、谷川兄弟は「神医」 秋成、感謝の書簡 和歌など40点展示−−伊丹 /兵庫」
 小説「雨月物語」の作者として知られ、俳諧、和歌など多彩な分野で才能を発揮した上田秋成(1734〜1809)が、自分の目の治療をした眼科医にあてた書簡などを展示する企画展「神医と秋成 谷川家資料にみる」が3日、伊丹市宮ノ前2の柿衞(かきもり)文庫で始まった。25日まで。
 秋成は、57歳で右目、65歳で左目も見えなくなった。播磨の眼科医である谷川良順、良益、良正の3兄弟が秋成の左目を治療し、晩年の創作活動を可能にした。秋成は3兄弟のことを「神医」と呼び、感謝と敬意を示した。
 今回、同文庫が谷川家の協力を得て、秋成が谷川家に送った書簡や和歌など約40点を展示。長さ約18メートルの巻紙に、随筆や和歌を織り交ぜた晩年の意欲作も並ぶ。
 根来(ねごろ)尚子・学芸員は「一般の人だけでなく、秋成を研究している人にとっても興味深い内容だと思う」と話した。
 一般500円、大高生250円、中小生100円。月曜休館。同文庫(072・782・0244)。〔阪神版〕

根来尚子さんは旧姓辻村さん。私の教え子です。今回ほとんど彼女一人で展示・図録のことをやっていただきました。
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岩佐又兵衛絵巻

深谷大さんから大分前に教えていただきましが、いまごろになってアップです。遅れて申し訳ありません。岩佐又兵衛絵巻の展覧会がMOA美術館で3期にわたって開催されます。1期はもうはじまっていて、山中常盤物語。2期は浄瑠璃物語。3期は堀江物語です。詳細はMOA美術館のHPへ。
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2012年03月06日

来聴歓迎!科研研究会

科研研究会のお知らせです。

「近世上方文壇における人的交流の研究」(科研基盤研究B、代表者 飯倉)の研究会を開催いたします。興味のある方は、来聴歓迎です。できれば飯倉までご連絡ください。資料の用意の都合もありますので。もちろん突然いらっしゃても対応できますから、思い立ったらご遠慮なくどうぞ。
目玉は、浅田徹さんの近世歌壇史論です。この発表は時間を長めにとります。
基本的には、内輪の研究会ですから、発表は、報告に近いものが多かろうと思います。あらかじめご了承のほど。あと順番は五十音順です。

告知が遅くなってすみません。
あ、私は発表しないのかって? す、すみません。

日時:3月9日(金) 13:30〜18:00
場所:大阪大学文学部棟2階会議室

《研究会プログラム》(題目など変更があるかもしれません)

・浅田徹「近世歌壇史のための覚書」

・大谷俊太「小川萍流家集『麓塵集』について」
・加藤弓枝「妙法院宮の嵯峨野遊覧」
・神作研一「香川家の血脈」
・浜田泰彦「『俳諧句双紙』に見る人的交流について」
・盛田帝子「光格天皇歌壇における近衛経熈と円台院宮ー転換期京都歌壇史のために」
・山本和明「天明大火一件点描」
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神医と秋成 講演しました

3月4日(日)、柿衞文庫で「神医への報謝―谷川家蔵秋成遺墨の世界」と題した講演を行いました。これまで何度か紹介してまいりました「神医と秋成」展を開催するにあたっての記念講演です。聴講者は62名。予想より多くてありがたかったです。内容はほぼギャラリートークを講演でやったような形。秋成の谷川家への書画贈呈は神への奉納の意識に近いということをお話いたしました。図録にもそんなことを書きました。

谷川さんをはじめとしてご親族が13名おみえになっていました。医仙と言われ、秋成の眼の治療にあたった谷川3兄弟の肖像の前で、記念写真を撮りました。
また関東や金沢、名古屋というご遠方をはじめとして、多くの研究者が聴きに(というか観に来られたついでに聴いてくださったのでしょうが)来られていたのには驚きました。関東だけでも数人いらっしゃいましたし。でもおそらく、展示には満足して帰られたことと思います。

完成した図録もその時はじめて見ましたが、デザイナーがかなり今回の展示趣旨を理解するためにいろいろと学芸員と話し合ったということもあって、とても斬新ながら、何か本質をつかんでいるような図録になっていたと思います。非常にきれいです。

ともあれ、観覧され、聴講してくださった皆様に深謝申し上げます。
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2012年03月02日

いよいよ明日から。神医と秋成

いよいよ明日から、伊丹市柿衞文庫にて、「神医と秋成―谷川家資料にみる」がはじまります。25日(日)まで。10時から18時。月曜休館。

西福寺の秋成陶像のレプリカが大正七年に五十体作られました。そのうちの一つが今回展示されます。有名な秋成像の原画も特別出品されます。あの履軒秋成合賛

3月4日(日) 私が「神医への報謝―谷川家蔵秋成遺墨の世界」と題した講演を行います。これを聴いていただいて、展示をご覧になると、とてもよくわかる!?
13:30から15:00の予定です。

詳しくはHPへ。





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