2013年03月29日

落語・講談に見る親孝行

下記エントリー、西鶴研究会の詳細な報告の中で、

「しばらくは西鶴のテキストの固有性についての質疑応答が続き、馬琴の文体や「隠微」という方法などと比較してもそこに同様の整合性を見出すことは不可能で、テキストの空白をどう埋めるかは研究上必然的な課題であることなどが、西鶴研究会の会員を中心に出された。それに対し勝又基氏は、そのことが武家批判や為政者批判へとなぜ直結していくのか、その必然性は何かを明らかにしてほしいとの強い問いかけがあった。」

というくだりがありますが、勝又氏(会ったら勝又君と呼びますが)は、私の後輩で、親孝行の研究をずっとやってきた方。「ランニング系」「講談系」「川釣り系」。その他バンドもやったり、いろいろな趣味をお持ちの、元気な近世文学研究者である。

 金沢大学の木越治さんの教えを受けたあと九大の大学院で中野三敏先生に学んだ。最初は確か西鶴を研究していたが、本朝孝子伝などの孝行説話研究に移り、今では「近世親孝行文学」の第一人者(といってよろしいでしょう)となった。西鶴に『本朝廿不孝』あり。親孝行文学研究者としては西鶴に興味がないわけがない。勝又氏の西鶴観は、西鶴戯作説を唱える中野先生の影響を受けたものだと思うが、同じ師に学んだ私と大体同様のものである。彼の質問は、私がその場にいたら、していたであろう質問なのである。(ま、そのあと杉本好伸さんに、「その認識自体が誤解なのでは?」と言われたらしいが…。そうでもないと思いますが)
 
 さて前置きが長くなりすぎたが、勝又氏がこの春から、NHKのカルチャーラジオ「文学の世界」を担当する。お題は、「落語・講談に見る「親孝行」」。なっかなか面白そうではないか。テキストも出版されているが、近所のそんなに大きくない本屋に4冊もあったから、相当な部数出てるんでしょうね。ここだ!チャンスだ!専門の研究を一般に還元する大チャンス。勝又氏もちゃんとわかっていて、わかりやすく面白く、「親孝行は娯楽だった!」ことを説いている。講談「応挙の幽霊」の元タネが奇談書の『新説百物語』所収の噺だという新見も惜しみなく披露している。どんな風にラジオでは語るのか。なにせ神田陽子先生の弟子だから、語りはメチャ得意。インターネットラジオで聞いてみたい。4月4日から。ラジオ第2放送木曜午後8時30分から9時まで。13回。
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西鶴研究会の様子が

私のつぶやきに応えたわけではないでしょうが、西鶴研究会の掲示板に、21日に行われた、共同討議「発熱する胡桃」の報告が、司会を務められた有働裕さんによってアップされました。
西鶴のテキストの表層に現れていないもの(主題?)を「ぬけ」や「カムフラージュ」と称してそこを読み込もうとする研究の流れに対して、それをやるより前に、もっと典拠とか伝承を洗い直す方がいいんじゃないの?、近世文学研究者が束になってさ、という木越俊介さん。そこに篠原進さんが、「それをやって、教室の学生の興味持たせられる?文学の読みの可能性を狭めない?」って反論。そのあと、ケンケンガクカクと議論が進行したようである。といってもこれは報告からうけたイメージにすぎませんので。
その場に居合わせたわけではないし、参加された方それぞれでご感想もまちまちなので、安易にコメントするのは避けたいと思います。
 以下は上記研究会の報告に対する意見ではなく、日ごろの私のスタンスだが、文学研究というのは、そもそもが一般読者のレベルとは違う「ムラ」社会の営為である。いやそれが文理とわない研究の性格というものではないだろうか。ただどこかでそれをわかりやすく面白く、教室の学生に、一般の読者に還元しなければならない。その場合、現代文学と同じ感覚で読めますよ、という部分も実際あるけれど、できることならそれを言うのは、研究者としては禁じ手にしておきたい。つまり研究としてはそれを語らない。その誘惑にかられても。そうでなくてもちゃんと教室で西鶴の面白さは伝えられるはずだと思う。
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2013年03月22日

21日の

研究集会は、みっちり5時間30分行われました。やはり、橋本順光さんの講演が群を抜いて面白かったですね。若手もそれぞれに、「国際研究交流集会」を意識して、わかりやすい発表を意図し、質疑応答も学会とは違う感じで、なかなか新鮮でした。江戸文学の発表2本(浄瑠璃と戯作)。タイ側からの質問は出ませんでしたが、懇親会できいたところによれば、大変興味を持たれたようでした。私も「クールジャパンの原点は江戸にあるんですよ」などと話していたのだが納得されたようです。それにしてもチュラーロンコーン大の修士課程には日本文学専攻が12人もいるということだが、これって、すごいですね。就職も結構引っ張りだこだとか。
同日行われた西鶴研究会は、いくつかの情報を合わせると、非常に議論が白熱したらしいですね。ぜひ西鶴研究会のサイトにどなたかレポートをお願いしたいのですが。
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2013年03月09日

チュラーロンコーン大学との国際研究交流集会

 タイのチュラーロンコーン大学と大阪大学が共同で行う日本文学国際研究交流集会も4回目を迎えました。3月21日(この日は確か西鶴研究会…)に大阪大学文学研究科大会議室で開催されます。13時10分から。
 学生9人の発表と、比較文学の橋本順光さんの講演という盛り沢山のメニュー。懇親会はなんと、数々の伝説を生んだあの、赤瓦で行われる。研究会も懇親会も、誰でも参加できるから興味のある方は是非来てください。世話人は大阪大学の合山林太郎さんです。大阪大学の近世ゼミからは、山中晋也君が浄瑠璃の「生さぬ仲」の親子について合邦を例に研究発表、もう一人有澤知世さんが「江戸文芸における〈善の髑髏模様〉」と題して発表します。
 ディスカサントや講評者を入れると、総勢30名がポスターに名を連ねるという、なかなかにぎやかな研究集会です。
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三浦しをん

予告しながら長らく書いていませんでした。三浦しをん『あやつられ文楽鑑賞』(双葉文庫)。実に文章がうまくて文楽の魅力を余すところなく伝えている。特に『女殺油地獄』論が秀逸だ。うーむ、とうなっていると、その論の一部が井口洋先生(奈良女子大名誉教授)の説と同じだったことにあとで気付いたとご本人が書いていた(井口先生はこのことご存知なのかしらん)。直木賞作家とはいえ、あまりのセンスの良さに驚きつつ読み終えると(一月以上前ですが)、解説を読んで納得。なんと早稲田の内山美樹子先生の薫陶を受けていたのだ。解説を書いたのが厳しい評価で知られるその内山先生。しかし絶賛に近い評価である。内山先生の研究者としての卓越した業績は言うもさらなりだが、文楽の面白さをわかりやすく伝える三浦氏のような作家を育てたことは、我々が見習うべき、素晴らしい先生の教育業績である。ついでながら三浦しをんは、国文学者三浦佑之氏のお嬢さんでもある。いやー、この世界の人脈情報に疎いとはいえ、知らなかった(実際ブログをやっていると情報通と思われたりすることがあるのだが大いなる誤解である)。つーか、最近の作家のこと知らなすぎやなー。反省!

さて、その三浦しをんが文楽の若き大夫を主人公にした青春小説が『仏果を得ず』(双葉文庫)だ。少し味付けが甘いところもあるが、それでも相当面白い。ここでも有名な浄瑠璃についての三浦氏の解釈が主人公を通して語られる。ちなみに『仏果を得ず』のタイトルは実は彼女の浄瑠璃観を表す象徴的な言葉である。なかなかわかりにくいタイトルを付けたものだなー。
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