2014年08月14日

江戸幕府と儒学者

 揖斐高氏の新著。中公新書。6月刊。紹介が遅くなりました。

 林羅山・鷲峰・鳳岡という、林家三代の人間ドラマを、幕府との関係を軸に描いたもの。新書という一般向けのスタイルで書かれているものの、内容は研究の最前線である。揖斐氏の長年の林家研究を基に、幕府との間で揺れ動く三代それぞれの心情を推し量りながら、御用学者という林家代々のイメージを覆して、人間味に満ちた人物伝としている。
 おそらくこういった切り口の林家論はこれまでなかったであろうから、本書の価値はそれだけでも高い。そして、これは賛否両論あるのではないかと思われるが、たとえば羅山の行為選択を「目的合理的行為」(マックス・ウェーバー)と見たり、鳳岡を「憂鬱」のキーワードで論じたりするのが、モダンである。つまり、近代人っぽいイメージで林家の人々を描いて見せたとも読めるのであるが、これは私の僻見かもしれない。「林家三代」という大河ドラマが作れるかもしれないと。

 私がこの本で流石だなあと思ったのは、55頁以降で、朱子学の思想を概述してみせたところである。これは、揖斐氏が朱子学を完全に咀嚼し、自分の言葉で語っているからではないかと思う。同じことは117頁以降の儒学の歴史思想を略説した部分にも言える。本筋から離れた部分だが、こういうところに、著者の力量を見ることができるのではないかと思う。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする