2016年08月31日

帰国

8月29日に無事帰国しました。
たいへんご無沙汰しました。
4ヶ月のハイデルベルク滞在と少しばかりの中欧の旅。
勉強になることばかりでした。
いろいろ考えさせられました。
追々、それを書く事があるかもしれません。
今は、旅の後始末と、諸々の締切と、新学期へ向けての準備などなどで、ちょっと余裕がありませんが。
お世話になった皆さまへ、心より御礼申し上げます。
また、留守中、多くの方にご迷惑をおかけいたしました。深くお詫び申し上げます。
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2016年08月04日

歴史学者たちとの研究交流

8月3日。日本から、科研(B)「儒教的民本主義と国民国家建設―東アジアの政治文化史的比較」のチームがハイデルベルク大学日本学科を訪問。ハイデルベルク大学側の教員と研究交流をした。

メンバーは、趙景達(千葉大学教授・朝鮮近代史・日朝関係史・東アジア比較史)氏をリーダーとする8名。ユリアン・ビオンティーノ氏(千葉大学助教・朝鮮近代史・日朝関係史)、久留島浩氏(国立歴史民俗博物館館長・日本近世史)、須田努氏(明治大学教授・日本近世史)、小川和也氏(中京大学教授・日本近世思想史)、村田雄二郎氏(東京大学教授・中国近代思想史)、武内房司氏(学習院大学教授・中国ベトナム宗教史)、伊藤俊介氏(福島大学准教授・朝鮮近代史)という錚々たる面々。ひとり15分ずつくらい、自分の研究を紹介するというので、4時間近いミーティングであった。

日本・中国・ベトナム・韓国史の一流の方々ばかり。このような方々の研究紹介を聞ける機会、そして意見交換する機会はめったにない。もちろん日本でも。

このグループに顕著なのかどうかはわからないが、やはり歴史家というのは「現代」に対する強い問題意識を持っているのだな、というのが第一印象、そのスタンスはやはり反権力ですね。もちろん文学研究者にもそういう立場はあるのだが、私たち日本近世文学者の多くは、そういう問題意識をいったん捨てますね。というと、「新鮮だな〜」という感想を述べる方もあった。

次に、彼らが、文学的な作品や、歌舞伎、日記など、文学研究と接点のある資料を結構使うんだなということが印象に残った。そこでも、近世文学の場合での、そういう資料の扱い方について若干意見を述べさせていただいた。『奥の細道』の虚構性についても「えっ」という反応をされる方もいた。

加藤周一がそこで食事したというレストランでの懇親会に入ると談論風発。歌論・西鶴・近松・俳諧・太閤記から寛政期の地誌流行と名所探訪、丸山真男論まで。それぞれの所属機関に私のよく知っている方がおられたりして、話題はつきない。『儒学殺人事件』の小川氏は、井上泰至氏の本の書評を書いたということで、文学研究側の悉皆調査の方法にいたく感心しておられた。書物研でも活動していらっしゃるということ。

一方で、歴史学研究と文学研究がこれまであまり交わることなく、また方法論的な議論を交わすことなくずっとやってきたことのツケは大きいなと感じる。こういうのはお互いにそれぞれの成果である著書を読んでもなかなか理解できることではない。今回、ひとつのチームという限定はもちろんあるけれども、歴史学の人たちの志向というようなものを、肌で感じられることが少しできたことは何よりであった。

こういう機会は作ろうと思ってもなかなか難しい。Wolfgang Seifert先生のお骨折りによるが、本当にありがたかった。
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