染谷智幸・畑中千晶編『男色を描く 西鶴のBLコミカライズとアジアの〈性〉』(勉誠出版、2017)。
わが誕生日に刊行してくださってありがとうございます(笑)。
BLの世界が盛り上がっているのはなんとなく存じ上げておりましたが、西鶴の男色大鑑のコミカライズが大いに注目を集めて、本も売れているというところにタイミングを合わせて、非常に面白い本が出ましたね。
これは、学術的成果をわかりやすく一般に伝える、というようなスタンスではなく、むしろBLあるいはLGBTの盛り上がりをそのまま紹介するというスタンス。そこに学術的な視点もあるが、執筆のありようは自由である。結果として、従来の学術的方法への批判にも、警鐘にもなっているが、あまりそういうことを考えずに、面白くどんどん読めてしまう。
本の工夫のひとつとしては、「です」「ます」体での統一。これは効果を上げている。そして染谷さんや畑中さんらの繋がり繋がりで執筆者が選ばれているが、その繋がり具合が、2つの座談会を求心点として、なにかの枠を突破するような世界を出現させている。
坂東実子さんの「鳥の文学」というテーマにかなりドキリとした。まさか最近飛行機でヒッチコックの「鳥」をみたからでもあるまいが。古典のコミカライズの問題は、日本古典文学研究とジャパノロジーを繋ぐ問題であること、外国の日本研究をしている学生と話したりすると痛感するが、次世代研究者世界には大きな分野になる予感がする。
いずれにせよ、この男色の問題は、いろいろな入口から入れるし、深めることも広げることもつながることも、いままでとは違うやり方でできそうだ。できそうだというのは、自分には出来ないのでやや羨望の混じった展望なのだけど。