2018年03月04日

科研研究会覚書

 先に告知していた、科研基盤研究(B)「近世中後期上方文壇における人的交流と文芸生成の〈場〉」(代表者・飯倉)の公開研究会が2018年3月3日(土)大阪大学豊中キャンパス(文学研究科本館・中庭会議室)で行われました。
15〜20名くらいを想定していたのですが、27名もの方が参加、東京や福岡からもご参加いただきました。
発表は次の4本。いずれもエキサイティングなもので、かつ質疑応答も議論沸騰し、刺激的で、充実した会になりました。
1 勢田道生 高橋図南の有職故実研究
2 盛田帝子 寛政新造内裏における南殿の桜−光格天皇と皇后欣子内親王
3 菱岡憲司 小津久足と本居大平――大平添削への反駁
4 青山英正 伊勢の文化的ネットワークと『春雨物語』
―石水博物館所蔵川喜多遠里宛竹内弥左衛門・正住弘美書簡をめぐって
 勢田氏は高橋図南という有職家の出自や著作、思想について基礎的な検討を行いました。有職研究という営みの意味について考えさせられました。特に東涯の門人であるということについて、人的ネットワークと思想形成の面で注目すべきだという議論がありました。儒学における礼楽や法制研究との関わりを考えるべきなのかと思いました。
 盛田氏は、光格天皇の中宮である皇后欣子内親王に注目。宮中歌壇で異例な待遇をされていることを指摘、そして光格が天皇在位中に、「南殿の桜」にこだわったこととその意味について論じました。欣子の異例な待遇についてはその出自とと関わらせての議論が交わされました。
 菱岡氏は、本居大平にうけた歌の添削について、徹底的に小津久足が反駁する資料を紹介し、その反駁の徹底ぶりに会場が沸いた。そして久足の添削観を足がかりに添削とは何かとか、大平否定的評価の広がりなどについて質疑が交わされました。馬琴研究がイメージする久足とは全く違って驚いたという感想もありました。
 青山氏は、石水文庫で調査中の川喜多遠里宛の膨大な書簡を読み込み、伊勢商人の書物交流を浮き彫りにする中で、秋成の著作、特に春雨物語文化五年本の貸借・書写の流れについて、見事に明らかにされました。いくつか問題は残るものの、桜山本・西荘文庫本・漆山本の関係が非常にすっきりと跡づけられました。秋成研究にとってこれは画期的な業績となります。
 これほど充実した研究会はそうそうないでしょう。参加された方全員が出てよかったと思っただろうと確信できる会でした。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする