2018年03月13日

歌舞伎評判記集成 第三期

『歌舞伎評判記集成』第三期の刊行が開始された。第一巻は2018年2月である。
 歌舞伎研究は言うもさらなり、近世文学研究に携わるもので、この第一期・第二期を利用したことのない者はいないだろう。
 役者評判記を集成して年代順に配列した歌舞伎研究必須の翻刻叢書である。また評判記という江戸特有の批評スタイルの型の原型が役者評判記である。ここに歌舞伎以外でも思わぬ情報が潜んでいることがあることは、浮世絵研究の第一人者である浅野秀剛氏が、明和七年の評判記に、浮世絵師鈴木春信の没年月日が記されていることを知って目を疑った経験を「推薦のことば」で書かれている。
 第二期が完結して何年になるのか、第三期が出ることがあるのか、などと時々思うことがあったが、関係者の方々は、第三期刊行をめざして、死にものぐるいの努力を続けておられたようである。
 和泉書院が岩波書店の判型や組版をほぼ引き継いで、ついに第三期がはじまった。安永から享和にかけての評判記が全十巻きの予定で刊行される。上田秋成の後半生とほぼ重なるこの時期の評判記の刊行は、ありがたいと何回言っても足りないくらいである。年1回刊行予定ということだが、果たして完結まで見届けられるかどうか。
 厳密な翻刻方針は引き継がれる。この叢書に深く関わった松崎仁先生が、かつて今井源衛先生から応援を頼まれて『学海日録』(依田学海の日記)の翻刻作業グループに入られた。その翻刻方針の議論で、この評判記集成の翻刻凡例が参照されたことがあり、あまりの厳密さに唖然とした記憶がある。その「翻刻覚書」をかつて書かれた原道生先生が、月報で、松崎仁先生とゲラの手渡しをされていたころのことを記されている。武井協三先生が松崎先生に翻刻を褒められて涙があふれた思い出を書かれている。歌舞伎研究者の先達たちの深い思いがこの叢書には込められている。
 そして、新しい世代(といっても既にベテランの域に達した方々ばかりだが)を中心に、第三期が刊行されるのである。題字はもちろん故郡司正勝先生。しかし、第三期の「三」の字はどうしたのだろうか。ある会議でHさんが、評判記刊行会のMさんにたずねたところ、「それは「第三巻」の「三」の字を使いました」と。なるほどお!
posted by 忘却散人 | Comment(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする