2018年03月24日

大師流と入木道書

 一戸渉さんの「大師流と入木道書−架蔵岡本保考宛妙法院宮真仁法親王書状小考−」(『斯道文庫論集』52,2018年2月)を拝受。妙法院宮周辺を私も微力ながら追っておりますので、興味津々によませていただきました。
 岡本保考は寛政頃大師流が宮中に用いられた功績者でその推挽者は妙法院宮真仁法親王であることを指摘し、二人の入木道に関する具体的かつ詳細なやりとりが明らかになる書簡を紹介・解説したもの。
 論文中にも出てくる金沢市立玉川図書館近世史料館収蔵の岡本家文書。これはちょっと見逃せないものですな。一度見に行こう。それにしても妙法院日次記があと1巻でいったん終了すると聞いているが無念です。せめて真仁が亡くなるまで、いや寛政期まででもお願いしたいのだが・・・。
 それにしても真仁さん(京都の人はこう呼ぶようですね)、画にも熱心だが、書にも熱心なのね。この人の文事ないし文事サポートを全面的に明らかにすべき。それではじめて十八世紀後半の京都雅文壇が見えてきます。
 さて注に私の関係する論集が近刊として出てきます。遅れています。一戸さんはじめ関係者の皆様ご迷惑をおかけして申し訳ありません。6月の学会までになんとかと思っていますが・・・。
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立圃自筆書入『十帖源氏』

 白石良夫・中尾友梨香編、小城鍋島文庫研究会校訂『佐賀大学附属図書館小城鍋島文庫蔵 十帖源氏 立圃自筆書入本【翻刻と解説】』(笠間書院、2018年3月)。
 タイトルを挙げただけで、本の中身をかなり紹介できたように思う(笑)が、立圃は近世初期の俳諧師であり、『十帖源氏』は一般には源氏のダイジェストと言われる。しかし「あとがき」によれば、「俗訳・要約して広く普及させる」ものではなく、「本文は源氏物語の原文をほぼそのまま用いており」「ただ、所々を大幅に省略して、分量を十冊に縮小させただけ」。立圃が『十帖源氏』に求めたのは、「原語」の魅力であるということ、想定読者はむしろ源氏読みの玄人だという。和歌は全く省略されていない。「基本的には俳諧を嗜む人のために提供された参考書またはテキストであったと見なすべき」なのだという。書き入れを検討すると立圃一門の源氏理解は『紹巴抄』と『河海抄』に基づいている。白石良夫さんの解説は相変わらず歯切れがよく、従来の版本理解を一歩進める。また中尾さんの「あとがき」は「あとがき」を超えた概説という趣だが、山本春正の『絵入源氏物語』に対抗して作られたという吉田幸一説をその逆かもしれないという重要な見解が述べられている。この本は鍋島直能の需めに応じた書き入れ本であり、その関係でその成立年は再考すべきであるというのである。
 ちなみに、この本のことは近く私の所属する某学会で、中尾さんが発表することになっている。
 ところで、白石さんの「まえがき」を読んで、九州の研究会の雰囲気がどどーっと蘇ってきて懐かしかった。こんな感じ、こんな感じと一人でニヤニヤしていた。
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