すでに、先週末の歴史学研究会(早稲田大学)でお披露目され、反応もよいみたいで、ありがたい。
ラインナップは以下の通りである。
序言 盛田帝子
緒論
光格天皇をどうとらえるか 藤田覚
第一部 近世歌壇における天皇公家
後水尾院と趣向 大谷俊太
霊元院の古今和歌集講釈とその聞書―正徳四年の相伝を中心に 海野圭介
冷泉為村と桜町院 久保田啓一
孝明天皇と古今伝受―附・幕末古今伝受関係年表 青山英正
武者小路実陰家集の二系統について―堂上〈内部〉の集と〈外部〉の集 浅田徹
香川黄中の位置 神作研一
第二部 朝廷をめぐる学芸・出版
『二十一代集』の開板―書肆吉田四郎右衛門による歌書刊行事業の背景 加藤弓枝
『大日本史』論賛における歴史の展開と天皇 勢田道生
中村蘭林と和歌―学問吟味の提言と平安朝の讃仰 山本嘉孝
江戸時代手習所における七夕祭の広がりと書物文化 鍛治宏介
書道大師流と近世朝廷 一戸 渉
梅辻春樵―妙法院宮に仕えた漢詩人 合山林太郎
第三部 光格天皇・妙法院宮の文芸交流
寛政期新造内裏における南殿の桜―光格天皇と皇后欣子内親王 盛田帝子
実録「中山大納言物」の諸特徴―諸本系統・人物造型を中心に 菊池庸介
冷泉家における光格天皇拝領品 岸本香織
妙法院宮真仁法親王の文芸交流―『妙法院日次記』を手がかりとして、和歌を中心に 飯倉洋一
小沢蘆庵と妙法院宮真仁法親王 鈴木淳
千蔭と妙法院宮 山本和明
あとがき 飯倉洋一
このところ、歴史学でも近世における朝廷あるいは朝幕関係の研究がかなりさかんになってきているように思う。文化史的側面についても、「天皇の美術史」などで、クローズアップされている。天皇文化・公家文化は、近世においても大きな意義を持っている。しかし、とりわけ文学的な面においては、天皇周辺については、後水尾院などごくわずかな文事に光が当たっていたにすぎない。近世後期における光格天皇の存在は非常に大きいが、その文芸面的な実態は明らかではない。本書においては、光格天皇とその兄妙法院宮の作った文化圏を中心とし、近世初期以来の「天皇文化」の縦の流れと、「天皇文化」の重要性およびその波及について、さまざまな角度から光を当てるものである。論者も錚々たるメンバーが集結した。ぜひご一読を乞う次第である。
なお、おのおのの論文については、改めてまた紹介していくことにする。
