『叢』40号が出た。2019年2月。いつもにまして分厚い。表紙の目次を見ると、黒石さんの黒本・青本『太平記綱目』を冒頭に、10本の草双紙の翻刻と研究。その相貌はいつもと変わりない。しかし、一番最後に黒石さんの「ご挨拶」がある。ん、何だろう?
そこには、終刊の挨拶があった。黒石さんの、振り絞るような言葉が連ねられていた。
『叢』の創刊は昭和54年である。九州大学の当時の院生たちが発刊した『文献探究』と同じく、手書き同人研究誌だった。『文献探究』創刊メンバーではないが、初期の活動に関わった者として言わせていただければ、『叢』は『文献探究』と兄弟の契りを結んだような、そういう研究誌だと思う。そのころ院生たちを中心とする手書き雑誌は他にあまりなかった。手書きではなくなったが、ともに今も続いている。
しかし、雑誌を続けていくことはすごくエネルギーを要する。モチベーションを保ち続けるのは至難である。運営・資金繰りも大変。
『叢』は研究同人誌としては非常に特異である。
第一に、東京学芸大学関係の方のみで運営・編集・執筆をしている。
第二に、草双紙の翻刻・研究に限定している。
これで四十年途絶えることなく雑誌を続けてきたことは、もう奇跡に近いだろう。小池正胤先生・黒石陽子さんのご人徳と、そこに集う学生たちの真摯な学問への志があり、「叢の会」の、研究会としての纏まりが、その奇跡を生んだのである。
しかし、いよいよ終刊。本当に本当に、ありがとう。お疲れさま、といいたい。