2019年08月23日

深谷大『さし絵で楽しむ江戸のくらし』

深谷大さんが『さし絵で楽しむ江戸のくらし』(平凡社新書、2019年8月)を刊行した。
江戸の雑学をウリにする本は多いが、どこまで信用していいのかと、ちょっと悩むこともあるが、深谷さんは、すべての記述にきちんと出拠を示しておられるので、安心して「受け売り」ができる。
黄表紙の絵を主な素材として、江戸の人のくらしを、挨拶、お祝い、踊り、下駄、足袋など、さまざまな切り口で軽快に紹介している。しかし、やはり芸能研究者だけあって、浄瑠璃や甚句の説明になると、軽快な中にも学者としての、「きわめる」性が垣間見えて、私からみるとそこが面白い。
それにしても、今のサブカルチャーや音楽シーンもきちんと抑えていて、今と江戸を軽々と往来するのには舌を巻く。とともに、今といっても、ちょっと前の歌謡曲などが例示していて(むしろいまの若者は知らないだろう西城秀樹の歌詞とか)、にやりとしてしまうというものである。ご当地ソングの羅列には、ついつい口ずさんでしまいそうになるう。
ともあれ、「楽しむ」とタイトルにあるように、肩肘張らずに楽しめる、それでいて研究の凄みもちゃんと伝わる本である。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする