2023年01月25日

国際研究集会「〈紀行〉研究の新展開」のお知らせ

国際研究集会「〈紀行〉研究の新展開」を開催します。オンラインです。
一つ前の投稿でお知らせしましたように、『大才子小津久足』(中央公論新社)を刊行されたばかりの菱岡憲司さんを、基調講演にお迎えし、他3名の方の発表とともに、さまざまな角度から、〈紀行〉研究の可能性に迫ります。ポーランドからは、アダム・ベドゥナルチクさんをお迎えしました。
興味のある方、是非参加登録をお願いします。

国際研究集会 〈紀行〉研究の新展開
日時 2023年2月22日(水) 15::00-18:40 (日本時間)
開催方法 Zoomによるオンライン
主催 科研基盤研究B「デジタル文学地図の構築と日本古典文学研究・古典教育への展開」(研究代表者 飯倉洋一) 
使用言語 日本語

プログラム

基調講演 (15:10-16:10)
小津久足の生業(なりわい)と紀行文
菱岡憲司 (山口県立大学)
【講演要旨】
小津久足は干鰯(ほしか)問屋の主人であり、本宅のある松坂と江戸店の往復や、商用で京・大坂を訪れるついでに名所旧跡に足を伸ばし、多くの紀行文を残している。つまり、もともとは商用を目的としながらも、紀行文では風流の旅として描いている。事実を重んじる久足は、積極的に虚構を描かないが、何を書くか、どう書くか、において創作的営為をおこなう。その具体的な様相を、久足の選ぶ名所旧跡の基準とともに紹介したい。

研究発表(16:20-18:00)
飛鳥井雅有の紀行と蹴鞠―『春の深山路』における東宮への思いをめぐって―
湯書華(大阪大学大学院博士後期課程)
【発表要旨】
飛鳥井雅有(一二四一〜一三○一)は彼の日記・紀行文『春の深山路』(弘安三年、一二八○)で、東宮(後の伏見天皇)への思いや、東宮の即位への強い関心を表している。本発表では『春の深山路』に見える雅有・東宮の親しい関係の形成について、その理由を蹴鞠の側面から考えてみたい。また、雅有が『春の深山路』においてどのような方法で東宮への思いを表現するのかを、同時代や、雅有自身のほかの紀行文と比較しながら検討したい。


文体の要素の一つとして散文化―『海道記』を例に―
アダム・ベドゥナルチク(Adam Bednarczyk) (ニコラウス コペルニクス大学)
【発表要旨】
 『海道記』は和漢混交文体の重要な例である。この紀行は、漢文から借用された豊富な語彙だけでなく、漢文学への言及にも基づく高度な漢化を特徴としている。しかし、簡単な暗喩や引用の代わりに、『海道記』の作者は漢詩文の一部を散文化したことが多い。作者は、詩の形式を捨て、散文に変えることで、日本的でありながらその要素が漢文的な原型を持つ現実の姿を描き出した。発表の目的は、『海道記』に『和漢朗詠集』等から借用された詩句がどのような変容を遂げたか、そして何よりも、和漢混交文体の構成の一方法として散文化が果たした役割について論じることである。

歌枕を継ぐ―『継尾集』の位置―
辻村尚子(大手前大学)
【発表要旨】
『継尾集』(元禄五年)は、「奥の細道」の芭蕉を迎えた酒田の不玉が編んだ集である。芭蕉「象潟の雨や西施が合歓花」句を筆頭に、諸家の象潟吟を収録する。なかには、芭蕉の跡を追った支考の「象潟の紀行」もあり、いわゆる「後の細道」の最初期の集としても注目される。
象潟は能因・西行ゆかりの歌枕である。奥の細道以後、そこに、芭蕉が名を連ねることになった。歌枕への俳諧の接続はどのようになされたのか。『継尾集』の例を考察する。

総合討論 〈紀行〉研究の可能性 18:10-18:40
菱岡憲司、ユディット・アロカイ(ハイデルベルク大学)、辻村尚子、中尾薫(大阪大学)
 司会 飯倉洋一(大阪大学)

参加登録はこちらからお願いします。

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posted by 忘却散人 | Comment(1) | TrackBack(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする