当日対面参加した方には、本会のこれまでの活動の総括ともいえる『未来を切り拓く古典教材─和本・くずし字でこんな授業ができる』(文学通信、2023年3月)に加えて、現古絵合わせカルタが配布された。すごいサービスである。ちなみに、同書はなんと全文PDFで無料ダウンロード可であり、SNSでは、驚きと歓喜の声が拡がっている。とはいえ、物としての本書はひとつの世界を作っていて、素晴らしい出来である。まずは店頭で手にとってみていただきたい。和本やくずし字を用いた授業の実践例を多く掲げている。
さてコテキリの会は2部構成で、第T部がこれまでコテキリの会で基調講演をした経験のある仲島ひとみさん、佐々木孝浩さん、飯倉と、コメンテーターを務めたことのある平野多恵さんと、このプロジェクトのリーダー司会の山田和人さんの5人による座談会。それぞれの教育実践に基づいて、和本・くずし字教育についての提言を行った。山田さんは意図的に「むちゃぶり」をして、登壇者の素を引きだそうとしたとおっしゃっていたが、登壇者はそれに戸惑いながらも、きちんと打ち返していたのは流石である(私は打ち損ないのファールボール?)。山田さんもおっしゃていたが、「コミュニケーションツールとしての和本・くずし字」、「テキストと組み合わされる絵の魅力」、「社会とどう関わるか、何の役に立つのか」というところの意見交換が面白かった。なかでも私が感心したのは平野多恵さんがゼミでやっている「和歌占い」。実際に学園祭やネットで、一般の人からも相談を受け、和歌で占ってあげて、「救われた!」と言った方もいるという話である。むかしから、和歌には人の心を動かす力があると言われているが、和歌占いの方法をマスターすれば、現代の人を救うこともできる、その実例があるということに、ものすごい衝撃を受けた。
第2部意見交流会では、10グループに分かれて、今回和本バンク(有志者からコテキリに寄贈された和本群。私も5点ほど持参して一緒に並べてもらった)から選ばれて、その場に並べられた100冊ほどの本から、自分の気に入った1点を選んで、それについて意見交換するというものだが、この意見交換会が異常な盛り上がりを見せた。またグループ分けが絶妙で、中高の現役教員、学部生大学院生、大学教員、なかには一般の方もいたが、どのグループでも、それぞれ入り交じっての意見交換。切実で、真摯な、しかし未来を見据えた手応えのあるやりとりが、私の所属したグループでも行われた。実際、私たちからみたら、ありふれた和本でも、それを選んだ人は、その本の面白さを滔々と語って、私たちにも「なるほどね」と、新しい発見を共有させていただけた。
各グループ代表が、3分の持ち時間で自分の推し和本について、その面白さや、どう教育に活用できるかなどをプレゼン。みなさん実に素晴らしいプレゼンをした。
対面の素晴らしさは、個人的にもたっぷりお話することができたり、次へ向けての繋がりを持てたり、やはり対面のポテンシャルはすごいです。山田さんは、芸能研究者だけあって、このイベントをひとつの劇(祭?)に見立て、最後は三本締め。場内湧き上がりましたが、だれもここで自足はしていません。みなさん、今日の成果をどう教育に活かすか、会が終わってからも、会場のあちこちで話し込む姿が見られました。
さて、配られた本、これは文句なしに素晴らしい出来です。和本とくずし字の教材としての必要性、魅力、実際の教育実践、自由に使える教材、とてもよく出来ています。無料ダウンロードもできるという信じられない大サービスです。https://bungaku-report.com/kotekiri.html
是非ご活用を。そして書籍版も手に取ってみて下さい。