荒木浩さんの『方丈記を読む 孤の宇宙へ』(法蔵館文庫、2024年3月)。荒木さんによれば、『古典の中の地球儀』(NTT出版)、『京都古典文学巡り』(岩波書店)と3部作をなすという(後述のトークイベント)。
気づけば川平敏文さんのブログでも2日前に紹介されているようだが、かぶらないように、この本について書いてみる。
この本についてのトークイベントが丸善で行われたようで、私はたまたまそのアーカイブを見付けて、拝聴した。https://twitter.com/hiroark7/status/1775876022959067638そのトークイベントも荒木節満開!心地よいテンポで自由自在に古今東西の話題を引いての楽しいお話だった。その時、荒木さん自身も言及していたが、この本の帯には「とかく、この世は住みにくい」とだけある。もちろんあの『草枕』の冒頭部分に出てくる言葉だ。本書には漱石と『方丈記』の関わりについて述べた部分があって、そこが例に漏れず面白いのである。
漱石は学生時代に先生に頼まれて『方丈記』の英訳をした。古文を英訳するのは大変だ。それで『方丈記』が漱石の身にしみこんだ。『倫敦塔』にも影響がみられて、方丈記に影響されたと思しい文章を(漱石が)引きつつ自身「禅語めくが」と述べる。その「禅語めくが」に注目して考察を展開するのが荒木さんならではだ。漱石は、方丈記を「禅の本」として認識していた・・・。
また太宰と方丈記についてもさらっと述べているが、これも面白い。
長明がどう考えていたかという深掘り(読み)とともに、長明はどう読まれていたかという問題がこの本にはあり、『方丈記』を読む、の「読む」が、まさにグローカル(荒木用語か)に考えられている。そして、これはまさに「古典の再生」の問題なのだ。