6月8日から10日まで、専修大学で日本近世文学会が行われた。今回は、全ての発表を聞いたわけではなく、発表以外の部分でも印象的なことが多かったので、「私記」を謳う。これまでも「私記」だったのだけど。
今回は、事務局・開催校がたくさんの企画を打ち出した。
天理ギャラリーで行われている北村季吟の展示との連携企画。土曜午前に行った。チケットを無料配布。展示は北村季吟の仕事を総合的に把握できるように工夫されたもので、芭蕉との接続、古典への向き合い方など適切なコンテンツが並べられていた。小規模ながら、充実したもの。
初日のシンポジウムは、神田古書店の老舗、一誠堂書店、誠心堂書店、大屋書房の三店からパネリストをお招きし、司会の津田真弓氏や聞き手の有澤知世氏が、自身もパワーポイントを用意しつつ、神田古書店の歴史や、仕事を、熱心な顧客の思い出などを次々に聞き出して行った。和書の個人的な保管方法など、実践的な質疑応答もあった。裏番組は若手交流会でこちらも盛況だったと聞く。総会前には、日本近世文学会賞の授賞式。慶應義塾大学大学院の浅井万優さんが授賞。デジタル文学地図の研究集会にも来てくれていた方なので、こちらも嬉しい。
懇親会でもひさしぶりに会話する人が多かった。田中則雄さんが古典再興について憂慮しておられ、近年私の関わった『古典の再生』を真摯に読んで下さっていたことに感銘を受けたり、古い友人である久保田啓一さんとそれぞれの今後の研究の展望について語り合ったりなど、楽しく会話した。最近、二日酔いで苦しんだことがあったので、ウーロン茶や炭酸水をまぜながら、飲み過ぎないように注意した(飲んだのはワイン2杯だけ)。
2日め、やはり旧友のロバート・キャンベルさんと書籍販売コーナー近くでばったりあって、彼が最近翻訳した『戦争語彙集』(岩波書店)の感想を伝えた。原作者を日本に招いての講演会やシンポジウムのプロデュース(3回ほどやったらしい)などの話や、彼が今とりくんでいる、ある趣向をもつ物語についての話など、語り合っているとあっという間に時間が経って、彼の昼食時間がなくなってしまった。
午後のトップバッターは後輩の勝又基さんの「大丸屋」の発表。後輩の丸井さんが会場校だったので、一肌脱いだとか。UCバークレーの三井コレクションの写本をずっと調査してきたので、その一本を使って、「写本文化」論を提唱するところに落とし込むものだった。ポイントになる妖刀が歌舞伎の影響を受けてあとから付け加えられたかどうかのところに質疑のポイントがあったようだ。
2日目終了後は、発表した勝又さん、キャンベルさん、宮崎修多さんら「九州」ゆかりの人たちで軽く食事をして、ほっこりした気分になった。
3日目は、今回の古書店連携企画の第2弾神保町古書店ツアー。5グループに分かれて7、8人ずつグループで五店を回る。我々のグループは沙羅書房、大屋書房、一誠堂書店、誠心堂書店、日本書房の順。時間があっという間で、次のグループが外で待つという場面が二度、三度。面白い本を惜しみなく展観してくれていて、手で触りながら堪能できた。同じグループだった天野聡一さんとランチして帰阪。ひさしぶりに神保町の本と食に浸り、旧交をあたためた学会でありました。発表内容にほとんどふれずにすみません。