『江戸文学』39号(2008年11月)は、「史料からみる文芸、史料としての文芸」という特集。
監修は鈴木俊幸氏。信越地域をフィールドに、旧家に残る書籍調査に長年携わる鈴木俊幸氏は、かねてより、書籍を史料として時代に位置づけることで、当代の時代の文化や人間の営為が再現されるとし、精力的に調査研究をされ、それを公にしてこられました。今回の特集は、その鈴木氏の方法意識に即した特集です。
大名文芸については大名の蔵書・文芸資料の悉皆調査によって、一種の文化圏研究がおこなわれることが盛んになってきています。しかし鈴木氏の場合は、たとえば小千谷の普通の家の蔵書を丹念に調べ上げて、一地方の普通の人の文芸・書籍享受の実態を推し量るということを少しずつ積み重ね、書籍享受論・文芸営為論へと組み立てていくのです。これはなかなか真似のできない、忍耐強い仕事です。いや、ご本人は楽しくて仕方ないに違いないのですが。鈴木氏の編者のことばから少し引用。
芭蕉でも南畝でもない彼らが、生活の仲で残した句や歌や詩そのものを、彼らの生活から切り離して評価しても、豊かな成果はえられないであろう。それらの「史料」としての有効性を最大限に生かし、彼らの生活の中に正確に位置づけてはじめて、彼らの文芸の意味するところ、時代の文芸の果たした役割が見えてくるはずである。
これまでの文学史とは根本的に違った発想ですね。歴史学的な発想と言えるかもしれません。この特集については、改めてまた書くことといたします。
2008年11月07日
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