2009年08月21日

白石良夫さんと和本リテラシー

中野三敏先生が、論文や本でさかんに「和本リテラシー」をあげるべきだという主張をしていらっしゃるのは、本ブログでも既報した。ロバート・キャンベル氏もテレビで師匠の説を広げようとしている。まあ、現代日本社会では、英語力は絶対必要のように言われているが、「和本リテラシー?何それ?」ってなもんである。「蟷螂の斧」とか「アナクロ」とかいう声も聞こえてこないでもない。しかし、その方がかえってやる気になるというのが、マイナー分野研究者の性というものだろう。

 「和本リテラシー」の根本は変体仮名読解力である。本家の中野先生もなにか企画をされていると仄聞しているのだが、中野門下もまた、師説の普及にいろいろ努力しているという話。
 佐賀大学の白石良夫さんは、オープン・キャンパスの模擬授業(といっても大学生相手の)で、高校生も飛び込み自由という、変体仮名読解のワークショップをやったらしい。集まった高校生10人は、とても真剣に取り組んでいたという。なるほど、模擬授業で行うというのは一案である。和本を見せるだけでなく、変体仮名を読ませるというのがいい。

「和本リテラシー」を今の時代に説くなんて、どういう時代感覚?といぶかる向きもあろうが、意外に若い学生は興味を示してくるもの。私なども授業で、和本を見せることがよくあるが、数百円から数千円程度で買った和本にも、学生たちは「本ものですか?」「すごい?」などと興味を示し、値段をきいて(その安さに)またびっくりする(もちろん、高い本は高いのですが)。ただ、ほとんどそれで終わってしまうのも事実である。和本が新刊屋に並んだり、「今月の和本」なんていう連載が新聞の読書欄ではじまるくらいでないとなかなか。

 和本リテラシーは回顧趣味ではない。活字化されずに眠っているフツーの本たち。ここにこそ、日本の文化史・思想史が詰まっている。これを発掘し、歴史や思想を再発見するという知的冒険のツールなのである。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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