この1月に縁あって、ニースのシェレ美術館所蔵の『北斎漫画』15編15冊の調査のお手伝いをした。その調査報告が柏木加代子・飯倉洋一「ニース・シェレ美術館所蔵『北斎漫画』についての調査報告」(「京都市立芸術大学美術学部、2012年3月)としてまとめられた。
三編に「北遊斎」なるものの書き入れがあり、「すわ!自筆書き入れ?」とニースの関係者から、調査鑑定を依頼された柏木加代子先生が、研究プロジェクトの連携研究者(調査要員)として私に声をかけてくださったのが、ことのはじまりだった。
残念ながら、自筆書き入れ本ではなかったものの、伝来系統、旧所蔵者など興味深い事実が明らかになってきた。なかでも、注目すべきは15編(北斎死後に出版されたもの)で、これは表紙を欠くが、こよりで仮綴じされており、扉の表題の部分が、本来「北斎漫画十五編」とあるはずのところ、まったく彫られておらず木目が見える。どうも見本刷のようである(収集者もそれを認識している)が、他に伝本はあるのだろうか?見本刷であれば、そんなに部数はないはずで、稀覯本だと思われる。永田生慈氏の北斎漫画についての書誌的な論考をみたが、見本刷の話は出てこない。しかし絵本研究に疎いので見落としているかもしれない。
その他の編も、取り合わせ本とはいえ、目利きの収集家が集めたのではないかと思われる。12編は色刷ではなく、初刷かと思われる墨刷。だが何分北斎漫画の伝本調査など、とても無理なので、広くご教示を乞いたいところである。
2012年05月09日
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