2013年01月14日

表紙裏の書誌学

2008年5月19日のエントリーで、「表紙裏反古伝説」と題して、次のような文章を綴った。

 渡辺守邦氏『表紙裏反古を国文学研究資料として活用する方法の開発をめざす研究』(科研平成19年・20年度研究成果報告書 2008年3月)が刊行されています。報告書とはいえ無類の面白さです。近世初期の版本の表紙裏に貼りこまれた反古が、実は古活字版だったりするというだけでも、興味津々ですが、本報告書の面白さは、文字通りそれを調査する「方法の開発」を試行錯誤的に行い、それを記録として残しているところにあります。そしてその調査から浮かび上がってくる意外な諸事実の発見へいたるまでの筆致はまるでドキュメンタリー、いや推理小説のようです。結果的には「大本」の定義の再考など、書誌学的な大きな問題も提起されています。報告書なのに「感動」してしまう。これはあの「伝説」の渡辺氏でなければなしえない実験であり、報告であったと思います。

今回、この報告書を元に、『表紙裏の書誌学』(笠間書院、2012年12月)が上梓された。これは幾重にも慶賀すべきことであろう。改めて読むと、内容はもちろんだが、渡辺氏の文章が実にすばらしいことがわかる。

 さて、上に書いた「大本」の定義の再考とは、普通「大本」とは「美濃判を半截した大きさの書型」と言われるのだが、美濃判半截とは、30cm×22cmくらいである。しかし、そんなデカイ本を実際に見ることはほとんどない。我々が普通に見る大本とは、27cm×19cmくらいのである。これをどう合理的に授業で説明すればいいのか、悩んでいたのは私だけではあるまい。しかし、この本を読めばそのあたりのことがすっきりわかるのだ。

 つまり、美濃判半截とは表紙に用いる紙の大きさ、製本の際には表紙の紙は天地とノドを折り返す。その分を切り詰めた大きさが、実際の大本になるわけだ。本文の料紙もこれに合わせて裁断される。表紙裏に張り込まれる反古はしたがって綴じを解いた刷り本ではなく、刷りやれ(裁断前の刷りそこない)になる。大福帳でもよい。大福帳は四周を折り返さない切り付け表紙である。

 渡辺氏の大本の定義は60頁に記される。

 大本とは美濃判大の板紙(はんがみ)を半分に折り、天地とノド側を、表紙の折り返しの分だけ切り詰めた大きさの書型。

 これは氷山の一角。驚くべき指摘が次々となされる。詳細な紹介・書評が待たれる。
posted by 忘却散人 | Comment(1) | TrackBack(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Posted by たわごと at 2013年01月16日 22:29
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