2013年11月03日

日本文学研究の国際化

宮内庁書陵部が11月1日の古典の日に、所蔵資料のWEB公開をはじめたことが話題になっている。「あのおかたい書陵部が」という感想も聞こえてくるが、規模からいって、かなり前から準備していたに違いない。これは、「便利になった」と喜んでいいことだが、忘れてならないのは、WEBは世界に開かれているということである。宮内庁だけではなく、早稲田大学の古典籍総合データベースや演博のデータベース公開をはじめとして、画像データベースのWEB公開は加速しているが、これらがどれだけ外国の日本文学研究者に福音をもたらしただろうか。

外国の日本文学研究は近年どんどんレベルアップしている。日本で学んだ留学生が母国に帰ってきちんとした教育を行っているからであろう。唯一不利だったのが、文献や原典へのアクセス環境だった。しかし、それも「原本を見る」ということを除けば、あまり変わらなくなってくる。いや日本の多忙な教員や、お金のない院生がなかなか調査に出かけられない状況では、原本へのアクセスも日本と大差ないかもしれない。

このようになって、日本文学研究の国際化が進んでくると、国際学会やシンポジウムなどの機会も増えてくる。そうした時に、使用言語が日本語である現在の状況も変わってくる可能性がある。浮世絵などを研究する人は多分一定の英語力は必須になっているだろうが、日本文学でも同様のことが起こってくるのではないか。
一方で、日本と海外とでは、研究方法がかなり違う。理論を重視する海外の研究者たちが、容易に文献にアクセスできるようになった時、それは日本の研究者たちにとっては脅威である。柔道と同じようなことが起こるってわけだ。

だが、よく考えると、これによって日本文学が世界に広く知られるようになることは歓迎すべきことだ。たぶん20年後の日本文学研究の風景は、相当変わっているだろう。私はもうリタイアしてるだろうが、今の若い人たちはその辺のこと、意識しておいた方がいいと思う。
posted by 忘却散人 | Comment(4) | TrackBack(0) | 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
素人が独学で「傾城水滸伝」の翻刻、校訂、翻訳をやっております。
WEB公開は、日本文学研究の国際化だけでなく、私のような素人にも研究もどきの扉を開いてくれます。
非常に楽しくやり甲斐もあるのですが、いかんせん仲間がいない(^^)
お金がかからず時間がつぶれる(^^)という意味では、シニアにうってつけの趣味だと思うんですが(私はまだ53ですが)、ビギナーが叩く扉がほぼ無い状況なのは非常に残念に思います。
と愚痴らせていただきました(^^)
Posted by 滝本 at 2013年11月12日 11:19
滝本様。コメントありがとうございます。傾城水滸伝翻刻のウェブサイト、拝見いたしました。貴重な得難いお仕事です。たしかに古典籍の画像のWEB公開は、滝本様のような、アカデミズムの外におられながら、古典に深い関心を持たれている方にも福音なんですね。大いに参考になりました。傾城水滸伝に限らず、合巻の翻刻はまだまだこれからですね。合巻は画文一体のものなので、文字だけ活字化してもなあ、と考えられがち、しかし画もいれるとなると、本にするのがなかなか大変ってことで、あまり進んでいないのではないかと愚考しております。むしろ今後は、WEB公開されている画像に、テキストデータを付加するサービスが出てくるのだろうと思います。
Posted by 忘却散人 at 2013年11月12日 14:26
ご返事ありがとうございます。
>アカデミズムの外・・・方にも福音なんですね。

私も含めて将来、暇な老人が増えますから、そのパワーを掘り起こしに使えばいいのにとは思うんですけどね。(^^)

>合巻は画文一体のものなので、文字だけ活字化してもなあ、と考えられがち、

おっしゃる通りです。
ただ文字が活字化されてないと売れるかどうかの判断も編集者にできませんから、翻刻を進めるしかないのでしょう。

>むしろ今後は、WEB公開されている画像に、テキストデータを付加するサービスが出てくるのだろうと思います。

私のような素人のテキストでも採用いただければうれしいのですが、例えば早稲田大学の図書館が採用していただけるとも思いにくく、研究者の成果も無料媒体(WEB)で使われるのは現実性がないように思われます。
大ヒット作品が出て、出版社などがその気になるのを待つしかないのかなと。
大ヒットは出版じゃなくてゲームとかの世界の可能性が高いのではと思います。
まずはこつこつ頑張ります。(^^)
Posted by 滝本 at 2013年11月13日 13:53
いろいろと参考になるコメントありがとうございます。
Posted by 忘却散人 at 2013年11月14日 14:15
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