近衞典子さんの論文集『上田秋成新考 くせ者の文学』(ぺりかん社、2016年2月)が刊行された。
一見、脈絡のない諸論文から成り立っているように見えるが、秋成の古典受容と作品の当代性というテーマで貫かれている。初出で大体読んだものばかりだが、これは私の関心のあるところと重なる部分が多いということもあった。秋成の作品は、秋成が読んでもらいたい第一読者を探り、その共通理解の部分を元に作品論を構築すべきであるという考え方もまことに共感する(もっとも、これは秋成だけではなく、近世文藝のかなりの範囲に及ぼすことができるかもしれないとこのごろ思っている)。
第二部の大坂騒壇と秋成の関係の探究は、中村幸彦先生の「宝暦明和の大坂騒壇」や「癇癖談に描かれた人々」を継承するお仕事で、割と秋成研究では蓄積の薄いところ、またなかなか分からないところだけに、貴重な成果である。また最近学会発表されて好評であった「吉備津の釜」論や、正親町三条公則との文芸交流を作品の読みによって明らかにしていくあたり、勉強になる。
近衞さんは、大阪大学に1年間内地研修でいらっしゃったことがあり、研究室行事にも積極的に参加してくださったし、上方文藝研究にも何度も投稿してくださり、合評会にも出席なさるので、わたしどものゼミでは、非常に近しい関係にある。履軒・秋成合賛鶉図は、懐徳堂記念会所蔵で、なるほど近衞さんの「鶉居」の論文に添えるにぴったりだが、表紙カバーに使ってくださるとは大変うれしいことである。
「くせ者の文学」というのは確かに秋成という人をよく言い当てているが、近衞さん自身はどう見ても「くせ者」というイメージからは遠い。大体お名前からしてそうである。しかしお酒は滅法いける口であるようだ。今はどうかしらないけれど。こういうことを書くとまた叱られそうなのでこのあたりでとどめておきたい。
2016年02月14日
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