真山青果シンポジウムの余韻に酔いすぎて、翌日の日文研の発表の準備を、当日朝、発表開始の1時間前までホテルでやるという綱渡りで、会場の慶応義塾大学に着いたのは、3分前。今日の発表は私だけだったのに、発表者がこんなに遅くなって本当に失礼いたしました。
さてこの研究会「投企する古典性―視覚/大衆/現代」というテーマ。なかなか難解だが、どういう発表をすればいいのか?座長の荒木浩先生からは、「ハイデルベルク大学でのご経験を通しての、国際的なくずし字教育の現状について、KuLAの紹介を含めてお願いします」みたいな感じで依頼されていた。
それならば、経験をお話すればよいわけなので、お引き受けした次第である。一応タイトルはえらそうに、
国際的くずし字教育の現状と展望―学習アプリKuLAの利用を中心に―
お集まりの、日文研ならでの学際的メンバー20名ほどに、「KuLAをダウンロードして下さっている方、どのくらいいらっしゃいますか?」と聞いたところ、10名弱の方が手を挙げてくださった。KuLAの紹介は、やはり関心を引いたが、古地震研究会が取り組んでいる、近く公開されるというクラウド参加型翻刻システム「みんなで翻刻」の紹介に、大きな反響があった。これは私もしゃべりながら、ものすごい可能性を感じた。このシステムの中にはKuLAも組み込まれていて、くずし字コミュニティの形成に大きな役割を果たしそうである。
しかし、さすが日文研の研究会だけあって、議論は非常に多角的である。くずし字未翻刻文献が1パーセントという数字は、「くずし字」を学ばない人は日本研究をしてはならないという強圧になっていないか、という観点は意外ではあったが、重要な論点である。また日本の実証的研究が海外の理論的研究に資するというのは、裏を返せば、日本的実証主義が理論主義の補助的手段としてしか位置付けられないことにならないかとか。この点に関しては河野至恩氏のバランス感覚にすぐれたコメントがあった。やはり、双方が両方のやり方を理解してはじめて、国際的な共同研究は実のあるものとなるのだろう。日本研究における議論を、国際的に共有できる議論にするために、考えるべきことは多い。
2016年12月04日
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