2016年12月20日

加藤十握氏の「菊花の約」論

加藤十握「孤独を超克する「信義」―『雨月物語』「菊花の約」小考―」(『武蔵高等学校中学校紀要』第1号、2016年10月)。
まだまだ「菊花の約」の読み方には決着がついていない。加藤さんは研究史を丁寧に踏まえて、新しい注釈的指摘と、あまり考えてこられなかった場面の考察を行う。その2点につき私はこの論文が研究史に残る論文になったと考える。
そのひとつは「軽薄」の用例として「杜甫」詩に着目し、その江戸期的解釈として『唐詩選国字解』を挙げていること。
もうひとつは左門が宗右衞門を待っている間の何気ない情景描写の中に、経済活動を行うものの損得勘定が話題になっていることを、左門の関心をまったくひかない事例として指摘し、左門が経済活動への興味がないこと、そのことが彼を「信義」に向かわせたこと、と解釈すること。
結論は、木越治氏の、〈「信義」の相対化〉に近いかと思われる。ありがたいことに私の説も引用していただいている。最後の「となん」に秋成の嘆息を重ねるのは、私としては?であるが、全体としては好論だと思います。
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