2016年12月23日

ことばの魔術師西鶴

 篠原進・中嶋隆編『ことばの魔術師西鶴 矢数俳諧再考』(ひつじ書房、2016年11月)。
「矢数俳諧」とは不思議な「文芸」である。「通し矢」に準えられる、速吟・独吟。記録を争う競争性とイベント性。西鶴浮世草子つまり散文との位置関係。さまざまな問題に満ちていて、様々なアプローチを可能にする。
 西鶴と俳諧の研究者が、この矢数俳諧に、それぞれの流儀で挑む。驚くほどその人の研究手法が浮かび上がる論集であり、かつそれがどれもこれも面白い。つまり、これは矢数俳諧を主題とする論集という企画の勝利だなと思った。
 もう5年も前に伊丹の柿衞文庫で行われたシンポジウムが本書の原点だという。そのシンポジウムに私も出席していた。実はこのブログでも書いている。非常に緊迫感のある、面白いシンポジウムだったということを思い出した。
 しかし、それから5年の間に西鶴について私なりに考えることもあって、今この論集に触れると、散文における議論の閉塞感(それは私だけが勝手に感じているものかもしれないが)に比べて、この矢数俳諧の議論の自由さ、発想の斬新さには目を見張る。
 西鶴は俳諧師。ここを論じて、やはり西鶴・・・、と改めて思う。個人的に面白かったのは染谷さんの「命がけの虚構」。アサートンさんの「アメリカにおける矢数俳諧研究の可能性」。いろいろ考えさせてくれました。
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