前エントリーの北斎展を企画したのは、大英博物館のティモシー・クラーク氏と、あべのハルカス美術館の浅野秀剛氏。クラーク氏とは、20数年前、中野三敏先生をはじめとする10人ほどのグループで訪英したさいにお世話になり、同窓のロバート・キャンベル氏と、大学時代にツーショットで写ったMENSCLUBだったかの男性ファッション雑誌を見せていただいたこともある(二人とも超イケメンで。クラークさんは最近ぐっと貫禄が)。山口県立美術館で催された大英博物館展の際にもお会いした。クラーク氏の研究方法が、きわめて緻密な実証的方法だったのに驚かされた。そのクラーク氏と、浮世絵研究のエースともいえる浅野氏がタッグを組んでの北斎展だったから、これほどのインパクトをもたらしたのだろう。
さて、その浅野秀剛氏の『浮世絵細見』(講談社選書メチエ、2017年8月)は、浮世絵研究の面白さを伝えようとする、これまでになかった一般書である。浮世絵の料紙や大きさ、浮世絵版画の包紙、異版の先後、絵半切・絵入折手本など、興味深いトピックが満載で、「浮世絵を研究したくなる」(終章は「浮世絵研究をしたくなった方へ」と題される)。と、同時に、近世小説と呼ばれる分野の研究は、絵を無視しては成り立たないな、と改めて反省させられる。それは同時に、浮世絵の対象である演劇も合わせ考えねばならないことも胸に刻まされる。
そういう反省は自分の胸にしまうとして、本書はマニアックでレベルの高い内容ながら、スリリングで楽しく読める本でありました。
2017年10月29日
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