2018年03月24日

立圃自筆書入『十帖源氏』

 白石良夫・中尾友梨香編、小城鍋島文庫研究会校訂『佐賀大学附属図書館小城鍋島文庫蔵 十帖源氏 立圃自筆書入本【翻刻と解説】』(笠間書院、2018年3月)。
 タイトルを挙げただけで、本の中身をかなり紹介できたように思う(笑)が、立圃は近世初期の俳諧師であり、『十帖源氏』は一般には源氏のダイジェストと言われる。しかし「あとがき」によれば、「俗訳・要約して広く普及させる」ものではなく、「本文は源氏物語の原文をほぼそのまま用いており」「ただ、所々を大幅に省略して、分量を十冊に縮小させただけ」。立圃が『十帖源氏』に求めたのは、「原語」の魅力であるということ、想定読者はむしろ源氏読みの玄人だという。和歌は全く省略されていない。「基本的には俳諧を嗜む人のために提供された参考書またはテキストであったと見なすべき」なのだという。書き入れを検討すると立圃一門の源氏理解は『紹巴抄』と『河海抄』に基づいている。白石良夫さんの解説は相変わらず歯切れがよく、従来の版本理解を一歩進める。また中尾さんの「あとがき」は「あとがき」を超えた概説という趣だが、山本春正の『絵入源氏物語』に対抗して作られたという吉田幸一説をその逆かもしれないという重要な見解が述べられている。この本は鍋島直能の需めに応じた書き入れ本であり、その関係でその成立年は再考すべきであるというのである。
 ちなみに、この本のことは近く私の所属する某学会で、中尾さんが発表することになっている。
 ところで、白石さんの「まえがき」を読んで、九州の研究会の雰囲気がどどーっと蘇ってきて懐かしかった。こんな感じ、こんな感じと一人でニヤニヤしていた。
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