2019年04月29日

日本漢文学研究の新潮流

 さて、2019年1月に勉誠出版から刊行された、滝川幸司・中本大・福島理子・合山林太郎編『文化装置としての日本漢文学』は、今後の日本漢文学研究者必携の1冊であると断言できる。
 国文学研究資料館のNW事業(日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」)公募型共同研究である「日本漢文学プロジェクト」の共同研究成果報告書という位置づけになるだろうが、現在慶應大学の合山林太郎さんが大阪大学在籍時に代表者となって進めてきたプロジェクトであって、NW事業に少し関わってきた私としては、立ち上げの熱いシンポジウムから見てきているので、このような刺激的な一書が出来たことに感慨を禁じ得ない。
 まず、大阪大学のスタッフ・OBが執筆者の過半数を占め、表紙にも阪大ゆかりの懐徳堂学主中井竹山の有名な後ろ向きの肖像を使っていただいているということ。阪大漢文学の層の厚さを見た。教え子の康盛国さんが論考を寄せているのも嬉しい。
 そして、本書の切り口の新しさ。通史的な論集になっていることも大いに有益だが、日本漢文学研究の最近の潮流を反映して、東アジア漢文交流というテーマを立てていること(日本と朝鮮、日本と清)、幕末維新における和歌と漢詩の交錯の模様、さらには漢学教育への視点に加え、特筆すべきなのは、世界の漢文学研究の現状を紹介していることで、英語圏・韓国・台湾の三つのケースが紹介されている。少し前には考えられないことだが、現在漢文学研究に、国内外を問わず優秀な人材が集まり、英語・中国語・日本語の壁を易々と越えて議論できる人材が輩出してきたからである。
 また福島理子さんの「エクソフォニーとしての漢詩」という視点。多和田葉子の著作から知られるようになったキーワードを日本漢詩文に応用し、和臭というネガティブな評価を、ポジティブに考える視点を打ち出している。鷲原知良さんもその観点からの論。
 そして抜群に面白いのが、マシューさんの、英語圏における日本漢詩文研究の現状分析である。英語圏で議論されている、そもそも日本漢詩文とは何かに関する様々な最近の考え方は、非常に考えさせられるものであった。

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