2019年07月19日

鈴木俊幸『書籍文化史料論』

 また鈴木俊幸さんが本を出した。『書籍文化史料論』(勉誠出版、2019年5月)
 新書版を矢継ぎ早に出す人は少なくないが、これだけきちんとした論文集を立て続けに出すのは・・・・。もう敬服以外にない。
 なにせ、同じ年齢なので、自分の怠慢を突きつけられるような辛さもあるのだが、そこはとりあえず目をつぶって、本書を紹介する。
 本書は、さまざまなレベルの書籍文化関連史料を元に、江戸時代から明治にかけての出版・書籍文化を縦横に論じた本である。
 ほとんどの史料が、鈴木さんの発掘したもので、鈴木さんの手にかからなければ、その史的意義を十全には説明できないものではないか。
 冒頭の京都書林仲間記録『重板類板出入済帳』(安永二年〜安永六年)の新出史料からは、一八世紀後半の本屋・書籍の裏事情が様々に明らかになった。影印・翻刻もついていて貴重。
 書籍目録・識語・書簡などから照らし出される書籍の流通や価格。さまざまな書籍関係の商取引のありかたや人的交流を示す葉書の解析。長野県の行政文書から明らかになった臨川寺絵図の謎。請取(領収書)と通(かよい)帳から見えてくる書籍価格、石見の医師の読書記録から見える医師の読書マニアっぷり、その他、引き札、貸本広告、貸本印、貸本屋の営業文書から見える営業実態・・・・、と、使う史料が、普通は見過ごしてしまうような、ごく普通のお仕事の書類やメモであることに驚かされるが、それを捌いて書籍文化論を展開する巧みな行論。もう何度もつぶやいた「参った!」を、また呟いてしまったのである。ちなみに2段組となっている後半の「書籍文化史料片々」は『書物学』連載。
 

 
posted by 忘却散人 | Comment(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。