笠間書院の人気シリーズ、コレクション日本歌人選の第四期が完結したようである。
家人の盛田帝子も、その1冊を担当した。『天皇・親王の歌』(笠間書院、2019年6月)である。
天皇の歌に関しては、谷知子さんの『天皇たちの和歌』(角川選書)、鈴木健一さんの『天皇と和歌』(講談社選書メチエ)がある。
いずれも、読みやすい好著である。今回の盛田の本は、これらの先行書と差別化するということもあり、かなり大胆に「江戸時代の天皇」を中心に置いた構成になっている。
また、「天皇(親王)」が、自身が天皇(親王)であることを意識した歌を選んでいるという。したがって、これまでほとんど知られてもいない歌がたくさん出てくるのである。
さらに、江戸時代以前の天皇の歌については、江戸時代の天皇が意識したであろう歌を選ぶという方針で臨んだようである。
そういう意味で、類書にない構成・選歌になっているのである。
おほけなくなれし雲居の花盛もてはやし見るはるも経にけり 後桜町天皇
陸奥のしのぶもぢずり乱るるは誰ゆゑならず世を思ふから 孝明天皇
副題に「和歌という形でつづる天皇のことば」とあるゆえんである。
したがって、店頭で本書を手にとって、「?」となった方も少なからずいらっしゃるだろう。和歌で綴る江戸時代天皇史の趣なのである。なお、現上皇の歌を含め、近代以降の天皇の和歌も収めている。
2019年08月10日
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