レベッカ・クレメンツ、新美哲彦共編『源氏物語の近世』(勉誠出版、2019年8月)が刊行された。
『源氏物語』の俗語訳として最初に公刊された都の錦『風流源氏物語』その続編として編まれた梅翁(奥村政信)『俗解源氏物語』『若草源氏物語』『雛鶴源氏物語』『紅白源氏物語』の全篇を翻刻し、挿絵も収載、注までつけている。
論考編として、クレメンツ氏、ピーター・コー二ツキー氏、マイケル・エメリック氏の、それぞれの江戸時代『源氏物語』受容論と、新美哲彦氏の、奥村政信の俗語源氏に関する考察を掲載する。
つまり、本書は海外の研究者が中心となって出来上がった本である。これには一瞬驚くのだが、「カノン」理論や受容理論に習熟している海外の日本文学研究者たちならではの本とも言えるだろう。しかし1冊になってみると、俗訳源氏物語の集成のインパクトは大きい。江戸時代における源氏物語の広がりに、我々は時々驚かされるのだが、本書を通覧すれば、俗語訳・あるいは翻案の果たした役割は実に大きいと思わざるを得ない。現代の源氏漫画の金字塔『あさきゆめみし』に繋がっている。
2019年08月30日
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