2019年09月20日

雅俗18号 その2 光るエッセイたち

『雅俗』の面白さは商業誌ではないのに、企画物が盛りだくさんということである。日本文学系商業誌が次々と撤退した今だからこそ、という川平さんの思いがある。川平さんは見かけによらず(失礼)、企画・人選が上手い。
 今回また新たな企画「この三冊」が登場した。寄稿者にお願いするのは、これぞという不朽の研究書・自分ともっとも縁の深い古典・院生に勧める一冊の3点である。佐藤至子さんが登場。『絵本と浮世絵』、『御存知商売物』、『落語の世界1 落語の愉しみ』を挙げている。
 白石良夫さんの連載エッセイ。これも相変わらずの手練れで読ませる。研究資料の提供とな何なのか、研究成果の発信とは何なのか、を具体的な例話で説いている。前半の「香炉峰の雪はいかならん」を紫式部のエピソードとする近世の読み物を、間違いと斥ける前に、なぜそういう説が流通したのかと考えるところに「江戸に出かけて江戸人に聞け」の注釈精神があると。これは私もQ大で鍛えられ、学生にも伝えているつもりである。後半の、翻刻に句読点や濁点をつけて提供するのはリスキーだが、やらねばならない、というところに学問の良心をみる話。これも全く賛成である。
 板坂耀子さんの「カルチャーセンターの周辺」。学ぶ意欲満々のカルチャーセンターの方々を、学問に「活用」できないかという提言。これも「我が意を得たり!」である。思い出したのは「みんなで翻刻」である。多くの一般の方が参加され、学問的に貢献されている。私の妄想では、「みんなで現代語訳」「みんなで翻訳」「みんなで二次創作」と、これはいくらでも広がってゆく可能性。学問とまなぶ意欲満々の方々をどうつなぐか、難しいと考えずにいろいろやってみる。リタイアしたら試してみたいこともいろいろあるな、などと更なる妄想を拡げた次第。
 渡辺憲司先生の「秋十年却って馬関指す故郷」。あの有名なメッセージ「時に海を見よ」の渡辺先生も、かつてはQ大の研究会で同席した方。そのあたりの頃をふくめて思い出を書かれている。これまた文章が巧すぎて引き込まれた。そしていつだったか渡辺先生のご自宅を訪れた時に、靴箱に蓄積された仮名草子用例のカードを拝見した日のことを思い出した。
 
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