2019年12月17日

アナホリッシュ國文學8号

『アナホリッシュ國文學』第8号が、5年ぶりに再出発。しばらく出なかったのは、この雑誌のために献身的につくしてこられた編集者のご病気によるものだったというが、ここに、8号が刊行されたことは、大変喜ばしい。特集は「太平記」で、兵藤裕己氏と呉座勇一氏の巻頭対談が面白い。歴史研究者が、平家物語と太平記とでは、向きあいかたが違い、それは一次史料の残存によるものだいう(なるほど!)話から始まって、呉座氏の『応仁の乱』についての自著解説、太平記の政治性・思想性、「楠木」か「楠」かなどの話題が続くが、はっとしたのは、歴史学者は『太平記』を史料として見ているため、オリジナルにこだわるということである。日本文学研究者も、しばらく前までは古態・オリジナルにこだわっていたが、今では、どちらかといえば、「原本が複数ある」ことに違和感を感じない研究者が多くなっていると思う。オリジナルにこだわる一方で、歴史学者が論文を書くときに、流布本を使うことが多いという指摘も。
 歴史研究者・日本文学研究者のほかにも、川田順造氏・島田裕巳氏などが執筆していて、バラエティに富む特集になっている。
 『観応の擾乱』で知られる亀田俊和氏が、『英草紙』第九話について書かれていたのは、嬉しいことだったが、有朋堂文庫の『雅文小説集』で読まれていたようである。ここはやはり、注釈・現代語訳付きの小学館の新編日本古典文学全集を使っていただき、またその解説も踏まえていただきたいところであった。
 また、すごいのは学界時評で、各担当者は5年分の時評をしている。もはや「時評」ではないと突っ込みたくなるが、これ、担当された方は大変だっただろう。しかし、それぞれのスタイルで面白く書かれている。とくに木村洋氏の「近代」時評は、研究方法という視点からわかりやすく整理されていて勉強になった。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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