2020年03月13日

伊勢商人の文化的ネットワークの研究

青山英正さんを代表とする科研基盤研究(B)「伊勢商人の文化的ネットワークの研究‒石水博物館所蔵資料をもとに‒」の研究成果報告書が刊行された(2020年3月)。伊勢の豪商川喜田家旧蔵資料を元に、江戸時代の伊勢商人が文化的にも非常に重要な働きをしていたことを、明らかにした、意義深い研究である。これまでも、研究メンバーの個別の研究成果発表によって、この川喜田家資料が宝の山であることは、知らされていた。上田秋成の『春雨物語』の流通についても、青山さんが書簡からさまざまな情報を析出して報告している。メンバーの菱岡憲司さんは、小津桂窓の資料を着々と発掘して報告している。本報告書は3部に別れ、第一部が総論で、青山さんの研究概要の説明、早川由美さんの川喜田家代々についての概説、そして神谷勝広さんの「十六代半泥子作成の書簡貼りまぜ屏風」の紹介。100通以上の書簡が貼り交ぜられたもので、当代を代表する文化人の書簡だらけである。
第2部の各論では、本資料を用いた興味深い個別研究が並ぶ。中でも青山さんの「伊勢における『春雨物語』文化五年本の流通について」で、文化五年本諸本を改めて整理し位置づけた報告は、私にとって非常に重要なものである。西荘本は桜山本の写しではあるが、「清書」で書かれているから、当代の人にとっては価値が高いのでは、という提言には、なるほどと思った。
第3部は、書簡目録。数千通に及ぶ。そのエクセルデータもCDROMで付けている。至れり尽くせりとはこのことである。この豊富な書簡群からは、まだまだ様々なことが明らかになるだろう。
それにしても、近世の資料は本当にまだまだたくさんある。これらを整理し、読み、位置づけるスキルを持つ研究者が途絶えないような、文化に理解のある社会であってほしい。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。