書名だけだと、あまりにもありふれていて、ちょっと不安になるので(笑)、著者名をタイトルに入れた。
塩村耕さんの『江戸人の教養 生きた、見た、書いた』(水曜社、2020年8月)。中日新聞に連載された、古書・古典エッセイである。見開きで1トピック。図版が必ず入る。
何年か前の惜別会で、ある学生がこういった。「飯倉先生は人文学は死者との対話だとおっしゃっていましたが・・・・」その時、私は、「へー、俺もいいこと言ってたじゃん」などと、忘却散人ぶりを発揮しつつ思っていたのだが、それを言っていたのは塩村さんだったことに後で気づき、逆にそれがそのあとのネタになった。たぶん塩村さんのことばを紹介していたのを、飯倉が言ったと学生も記憶していたのだろう。もしかすると受け売りでしゃべっていたのかもしれない。
さて、この本、本当に「死者との対話」というのが相応しい、塩村さんらしいエッセイ集である。「らしい」と言ったが、今の塩村さん像というのは、やはりここ20年ほどの岩瀬文庫悉皆調査の実績から醸し出される、古書とともに生きるイメージである。だから、このエッセイ集には、ほとんど現代の人が出てこない(延広真治先生が出てきたが、延広先生もまるで江戸文学の生き字引のような人だから、現代人ではないかもしれない)。まさに江戸時代人との対話を地で行く本なのである。
とりわけ冒頭から話題が続く中根東里に対する思い入れは、よく伝わる。「名を好む心は学問の大魔なり」と言った人である。東里がこのごろ塩村さんに乗り移っているように思える。たしかにこの東里という人、言葉がじんわりと沁みるものが多い。そしてかぎりなく謙虚なのだ。そこにうたれる。
さて、古書が現代に役に立つ例として、「こむら返り」を快復する方法が紹介されている。男と女で方法が違う。実際これ、効くらしいのである。これもここに転載したいのだが、あまりにも意外な?方法なので、どうか本を読んでいただきたい。
2020年08月22日
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