昨日オンラインでおこなわれたデジタル文学地図プロジェクトの国際研究集会の覚え書き。ご多忙の中、40名ほどのご参加を得ました。
デジタル文学地図は、歌枕をマッピングし、それぞれの歌枕についての概要・特徴・連想を示し、古典文学テキストの用例で集積し、その底本としている国文研のオープンデータの画像にリンクをはり、またやはりオープンデータの名所絵にもリンクを張る総合的な名所WEB事典の役割をめざしています。歌枕の立項と、用例は日々追加していて、有用性は日々高まっていると思います。
今回は、このデジタル文学地図が、研究や教育にどう資するかの実践報告2本と、若い研究者による名所イメージ形成に関わる発表2本です。
デジタル文学地図は、着々と「拡張」を続けていて、歌枕の立項は75地点が準備されていて、八代集、伊勢物語、源氏物語、平家物語、奥の細道の用例が網羅され、現在は謡曲に力を入れています。今回は、杉本亘さんの能における「逢坂」についての発表から、和歌系と謡曲系で、異なるイメージ形成が行われていることが浮かび上がったことに興味を覚えました。また黄夢鴿さんの名所詩歌合についての発表を通して、中国と日本の名所の「組み合わせ」から、用例収集とは違う方法でのイメージ分析が行える可能性が示唆されました。ちなみに私は『雨月物語』「白峯」の冒頭や「浅茅が宿」の作中歌に出る「逢坂」についてデジタル文学地図を援用した考察を行いました。ハイデルベルク大学のアロカイさんは、文学地理学的方法からの作品アプローチの教育実践について報告されました。
フランコ・モレッティの提唱する「遠読」と日本の文献実証主義をうまく掛け合わせて、新しい方法による文学研究が生まれる期待も出てきましたし、教育への活用や、社会貢献まで、可能性が示されました。
とくに終了後の懇親会では、デジタル文学地図の今後へむけて、他のマッピングプロジェクトとのコラボの可能性や、「みんなで翻刻」方式によるクラウドソーシングの展望などについても意見交換ができました。だんだんと「使えるツール」になってきている実感を味わえました。
参加してくださった方々に感謝申し上げます。
このプロジェクトは今年度、ゲストをお招きしてのシンポジウムを予定しています。
2021年09月26日
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