この土日は日本近世文学会。土曜は某研究会、日曜はリハーサルとていずれも9:30からZoom入り。閉会の言葉を言わねばならないのもあって、全ての発表を視聴しました。初日は、「見せる/魅せる 近世文学」というテーマで、海外2館をふくむ国内外6館の展示担当者によるパネルディスカッション。みなさんのそれぞれの努力と工夫に感服しました。「何を、どこを」「どのように」「誰に」見せるのか、そもそもどうやって展示会場に来させるのか、どうやって来た人をリピーターにするのか、また拡げてもらうのか、さまざまな課題に日々取り組んでおられる。それぞれの情報交換でもあり、今後の展望でもあったが、研究者コミュニティはそこにどう絡むのかという議論もあってよかったかもしれない。それにしても、まさに我々研究者が研究の何を、誰に、どう見せるのかという問題を突きつけたパネルでもあった。いずれにせよ、学会員以外、研究者以外に学会を開いていかねばならないとつくづく感じる。近世文学会はわずか650名のコミュニティであり、そこでしか通じない言葉で得々と語り合っている場合ではないのではと。
2日目の研究発表会では、やはり和本の表紙裏の紙に漉き込まれた人の毛髪から当時の食環境がわかるという文理融合研究であり、新しい潮流を見せたものである。もっともこの研究の目的は江戸時代の食環境(史)を明らかにするもので、江戸と上方の食生活の違いや、時代が下るにつれて食環境が変わってくる様子がデータから裏付けられるというのはすごい話であった。ただその結果は常識を覆すというものではなく、その先、あるいはそれが文学研究にどうフィードバックされるのかという点が今後の課題なのだろう。この文理融合研究、今は「文理融合できること」探しの段階のように思える。その点、古地震研究の文献学との融合は、何を明らかにするかが先にある点で、必然性というかモチベーションが高い。我々の立場から言えば理系の研究に資することは本当に大事なことであるが、一方で理系的方法をとりこまねばどうしてもわからない(料紙や墨の年代測定はそのひとつである)ところからの文理融合案件を実現していく必要があるかと思う。これには学術行政の問題でもあり、たとえば学会や国文研などが議論を起こしていくべき問題だろう。
オンライン学会ということで、質疑応答の管理がマニュアル化して、スムースだったし若い人の質問が多かったことはよかったと思う。650人のコミュニティを膨らます方向はほぼ望みがないので、他の学会や研究コミュニティとの連携、今回のような美術館のようなところとの連携、一般の方への開放など、大胆に今後を展望していく必要があるなと思ったが、若い人たちの感度には期待がもてると思っている。
学会報告というよりも、私の感想記になってしまいました。
2021年11月22日
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