2022年11月13日

賀茂社家古典籍セミナー参加記

 11月12日(土)は、国文研共同研究が主催する「第1回賀茂社家古典籍セミナー」に参加した。京都である。まもなく告知する2月の国際シンポジウム(私も運営に関わっている)の会場で行われるので下見の意味もある。会場となる箱は立派なもので、安心した。アクセスと周囲の様子も検証したが、周囲に飲食店があまりないようである。もすこし調査を続けよう。
 セミナーは3本立てで、宇野日出生さんの基調講演「上賀茂神社と社家のふしぎ」、小林一彦さん(共同研究代表)の「鴨長明『方丈記』の性格」、家人である盛田帝子の「賀茂季鷹と王朝文化復興」である。いろいろ学びがあった。
 ここでは小林さんのご講演について。方丈記の流布本系の本文の性格を考えるという問題意識だが、実に興味深いのは、本文の性格を考える際に、後代、それも江戸時代の天明飢饉・沖縄戦・阪神大震災での証言などの画像資料や証言資料を使うという斬新な方法である。まさにデータサイエンスのモデルとなる発表である。方丈記の本文には、圧死で目玉が飛び出すとか、災害で亡くなった母親の乳を子供が求めているという記述が出てくるのだが、その記述は長明が現場で見たものなのかどうなのか。災害や戦争では、多くの「死体」が現場に残される。それがどのような有様であったか、江戸時代の飢饉の記録、沖縄戦の記憶を描いた映像、阪神大震災後の被災者の証言が、驚くほど方丈記で描かれたそれと一致することを示した。これにより、長明が、現場に出向き、死体のありさまを正確に描写し、それを伝えようとしたこと、つまり長明のルポルタージュの精神が浮き彫りにされた。こういう方法で古典本文を読むことができるのかという驚きとともに、「古典に学ぶ」ことができるという実例を示されたご講演であった。
 会場には国文研館長の渡部泰明さんもいらしており、久しぶりに、しばしお話することができた。「鎌倉殿の13人」の和歌考証がどのようになされているかなどの秘話を聞けたのはラッキー。
 個人的にお世話になっている賀茂季鷹のご子孫にあたる現山本家ご当主もはるばる香川からお見えで、ご挨拶ができた。ご本人は英文学の先生だが、古典籍の継承には非常にご理解がある。会場では展示コーナーがあり、京都産業大学所蔵の競馬(くらべうま)関係資料が展示されていた。立派なものだった。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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