田中道雄・田坂英俊・玉城司・中森康之・伊藤善隆編『蝶夢全集続』が届いた。正編から九年、待望の900頁超。書簡編が圧巻である。そして、田中先生の「列島にくまなく蕉風俳諧を」と題した解説。要熟読。しかし、今はこの本を手にした昂揚感を記すにとどめたい。書簡編を摘読すると、文芸への熱い思いが伝わってくる。これが田中先生の熱い文学観と重なって見えるのは私だけだろうか。帯にも記された、光格天皇が新しい御所の壁に掛けた座右の銘のことを記す書簡。蝶夢は、情報の切り取り方も一流だ。この書簡編は、安永から寛政にかけての上方文壇を研究するものには必読であろう。
そして、蝶夢の文芸への確かな信頼を説く田中先生の解説には、時々目が釘付けになるような記述がある。
蝶夢が、火災にあった知人に「風雅(文学)は、かかる時の役に立申候ものにて候」と書き送ったことをとりあげて、「蝶夢の〈文芸は人を苦しみから救う力を持つ」との認識は、甚だ深く、また新しく、近代的とさえ言えよう」と。
本書については、あらためて書きたい。まずは、ご上梓への祝意を表したく、かくのごとく候。
2022年11月18日
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