今西祐一郎先生編注の『源氏物語補作 山路の露・雲隠六帖他二篇』(岩波文庫、2022年12月)が刊行された。
源氏物語のいわゆるスピンオフを集めたもの、といえようか。
そもそも、「未完」的な終わり方をしている源氏物語の続きを、想像したくなるのは当然で、江戸後期、京都で和文の名手としてならした伴蒿蹊の主催した、「和文の会」(みんなで集まり、題を出して擬古文を作る会)では、「夢浮橋のあとを継ぐ」なんていう題で作文が行われている。また、源氏物語にあえて書かれていない場面を想像して、創作してしまうというのもある。それが「他二編」のなかのひとつ、本居宣長の「手枕」である。これは宣長が、源氏と六条御息所のなれそめを書いたものだ。そして、私にとっては、この「手枕」が岩波文庫にはいったのか、という感慨が大きい。
今西祐一郎先生の解説も面白いが、ありがたいことに、秋成の「手枕」評に触れてくださっている。『文反古』という秋成の書簡を集めた版本の中に、宣長と秋成の仲介的役割をした荒木田末偶(すえとも)宛書簡で、秋成はこの作品をこきおろしているのだ。私が学生とともにこの『文反古』を注釈し、科研報告書として刊行したが、このほとんど知られていない地味な成果を、参考文献として取り上げてくださっている。ありがたいことである。
2022年12月28日
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