2023年02月13日

国際シンポジウム「古典の再生」報告

2月11日、12日、京都産業大学むすびわざ館で、国際シンポジウム「古典の再生」。前日の打ち合わせ・リハーサルから本日(2月13日)の意見交換会まで、4日間にわたる全日程を終了しました。シンポジウムは何度も企画しましたが、これほどの論客を集め、広く、深い議論をし、反響の大きかった会は、経験がありません。初日のエドアルド・ジェルリーニさんの基調講演、持説の「テキスト遺産」を古典×再生とし、以前うかがった講演をさらにパワーアップした内容で、キー・ノートに相応しい内容でした。それを受けての盛田帝子、ロバート・ヒューイ、アンダソヴァ・マラル各氏の発表は、江戸における王朝文化復興、琉球における日本古典の受容、古事記・日本書紀・風土記の各国訳とその違いなど、異なる視点から古典の再生の事例報告となりました。ディスカサントの荒木さんのコメントと質問は、荒木さんらしい博学と豊富な国際会議経験に基づく示唆深く、鋭いものでした。続く永崎研宣グループによるTEI入門講座+TEIでこんなことができるのプレゼンは、非常な反響をよんでいます。DH系の集会ではなく、古典文学系の研究集会で、これをやったことに大きな意義がありました。さっそく、その日のうちに、今お持ちのテキストデータから索引作成をしたいという研究者が、永崎さんに質問をされていました。特別プレゼンという場を作ってよかったと心から思いました。2日目の3つのセッション、ひとつめの「イメージとパフォーマンス」は、亡くなった楊暁捷先生が作成されていたプレゼンビデオから始まりました。楊先生のご遺族もZoomで御覧になり、喜んでいただけました。佐々木孝浩さんには人麿像について、さすがの蘊蓄・資料を提示、個人的には「ぬば玉の巻」の紹介が嬉しかったです。ジョナサン・ズウィッカーさんは『安積沼』の小平次が近代以降もさまざまなメディアに現れたことを紹介、「生きている小平次」と出征兵とのダブルイメージから小野田寛郎さんのことを思い浮かべた視聴者もいたようです。佐藤悟さんが今傾注されている女房装束の復元事業の紹介にも関心が集まりました。討論者の山田和人さんの相変わらずのスマートな問題整理、安定の仕切りでした。予想通り盛り上がったのが第2セッション「源氏物語再生史」。田渕句美子さんの「阿仏の文」から源氏物語を読み返すと、夕顔のふるまいがこんなに違って見えるのかという驚き、松本大さんの物語色紙を大量に読み込んでの考察、兵藤裕己先生の、もう一つの近代文学(史)を幻視するパースペクティヴをもった樋口一葉論と、まことに多彩でどれもこれも面白い発表、そして「再生史」の「史」にこだわった中嶋さんの怒濤のコメント。しかし周到な中嶋さんはふとフロアの中森康之さんに振る。中森さんのコメントも素晴らしい。いずれにせよ兵藤論は今回のシンポの議論の大きな磁場でした。そして第3セッションは、オンライン参加の山本嘉孝氏の柴野栗山の朝廷文物への関心についての具体報告、アロカイさんの紀行文における古典(レトリック)と古典ばなれの話題、飯倉の、上田秋成の万葉集注釈における逸脱する語りの考察、オンライン参加の討論者合山さんが、次々に簡単には答えられない質問をぶつけてきましたが、質問で討論時間が終わってしまい、議論にいたらなかったのは残念でした。しかし合山さんが、最後に基調講演に戻って、本シンポジウムの意義そのものを問うような問題提起をされたのは重要でした。そして今日13日も、登壇者があつまり、シンポの議論をさらに深める丁々発止のやりとりが行われました。近い未来に向けての作戦会議も。1年前から準備をはじめた大規模シンポ、とりあえず、大きな山を超えました。登壇者のみなさま、対面参加者、オンライン参加者のみなさま、運営スタッフのみなさま、すべてのみなさまに感謝です。
posted by 忘却散人 | Comment(0) | TrackBack(0) | 私の仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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