2023年03月01日

古活字探偵事件帖

 古活字探偵とは高木浩明さん。古活字本悉皆調査をライフワークとし、精力的に調査を進めておられる。その副産物である論文集も刊行されていて、このブログでも紹介したことがある。われながら、いい紹介文なので(笑)、是非ご参照賜りたい。
 高木さんは古活字探偵を名乗る。探偵というより刑事ではないか、と無駄口も出てしまうくらいに、徹底的な聞き込み、いや書誌調査のため、全国を歩き回る。多分海外も視野に入っているだろう。
 さて、高木さんの仕事の尊さは、日本文学研究者(とくに中世・近世の研究者)なら誰しも知る所だが、まだまだ一般には周知されていないかもしれない。すくなくとも古本好きには周知されてほしいものだ。したがって『日本古書通信』に高木さんが連載を持つことになったことを風の便りに伺った時は、「それはなにより」と私も喜んだ。題して「古活字探偵事件帖」である。
 2023年1月号から開始されて、現在連載は2回。1回目は「古活字版の誕生」と題するが、古活字版入門というべき位置づけになる。つまり探偵心得のようなものである。その中でしっかり胸に刻むべき教えを私なりに選べば、「新たな学問の受け皿として誕生した」「古活字版は整版とは大きく性格が異なっている。どちらかというと写本の性格に近いものがある」(引用ではなく大意です)というものである。つまり、古活字版は、その大部分が立派な本なのである。
 2月号は「欠損活字を探せ!」。いよいよ探偵としての最初のミッションが示される。古活字か整版か、一見判断が難しい時に、何が決め手になるのか。「古活字版は、限られた活字を繰り返し用いるので、全く同一の活字が別の丁にも繰り返し出現する・・・確実に同一の活字であることを確認する方法がある。それは「欠損活字を探すことである」」。その結果、古活字版研究の巨人である川瀬一馬氏の考察をひっくり返す、大ドンデン返しが起こるのである。まさに、探偵小説さながらのスリリングな展開。今後の事件帖の公開に期待がかかる。
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