家人に送られて来ていた抜き刷りをそれとなく手に取ったら、かなりエキサイティングな論文だったという話。
古相正美さん。私と年が近くて、すごく古い付き合いの方。専門は近世和歌で多田南嶺についての本を出したり御会和歌年表を作ったりしている。いまは福岡に在住。何十万首という宮廷御会和歌の翻刻を続けているという。その古相さんが、不思議な事に気づく。いろんな人が出詠している御会和歌の和歌が、冷泉為村の歌集の歌と一致している例が次々に見つかったというのである。冷泉為村の歌集2166首のうち、1621首が、江戸時代の御会和歌(為村の和歌ではない)と一致するという。その発見と報告が「江戸時代御会和歌と「冷泉為村卿歌集」」(『朱』66号、2023年3月)になされた。スゴい発見。もしこの歌集で為村の和歌を論じたらとんでもないことになる。
為村の専門家久保田啓一氏はどうやら、為村の歌集を怪しいとにらんでいたらしく、ほとんどそれに言及していないそうだ(古相論文)。さすがですな。
ではなぜそういう奇怪なことが起こったのか。為村は御会和歌の題者や奉行を務める。手元に和歌の控えをとることが可能である。「おそらく和歌練習の手控えとして冷泉家に所蔵されていたものが、なんらかの形で流出し、冷泉為村の和歌集と名付けられて流布したものと見ることができるだろう」と結論づける。いやこわいこわい。
2023年04月21日
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