2023年05月04日

知と奇でめぐる近世地誌

 木越俊介さんの『知と奇でめぐる近世地誌 名所図会と諸国奇談』(ブックレット〈書物をひらく28〉平凡社、2023年3月)。
 田中則雄さんと私とで編集した『日本文学研究ジャーナル』7号(2018年)の特集「近世後期小説の作者・読者・出版」で書いていただいた「寛政・享和期における知と奇の位相ー諸国奇談の戯作の虚実」が一応出発点になっている。そして、あとがきに記されたているように、私が開催校としてオンライン開催した絵入本ワークショップ12(2020年9月)での発表「寛政〜文化年間の名所図会と怪談・奇話・仏説」、さらに、これも私たちの共同研究であるデジタル文学地図プロジェクトによる国際研究集会の研究発表「十九世紀における地誌の広がりー名所図会と奇談的地誌(2020年12月)が、この本の大部分を占めている。木越さんの研究を進めるきっかけになっていたら、大変嬉しいことである。
 私じしん、近世中期ではあるが、「奇談」書研究をやってきたし、ここ数年はデジタル文学地図プロジェクトに関わっていることで、木越さんの研究には大いに関心があるばかりでなく、実際にプロジェクトに協力もしていただいている。
 『東西遊記』をターニングポイントとする「奇」への向き合い方の転換を地誌、たとえば名所図会に着目して、その中での奇の描き方を分析している。私なりにまとめると、「奇」に対して、19世紀の地誌の著者は「知」で向き合うのだが、それは「奇」の否定や合理的解釈とは違い、旺盛な知的興味や観察に基づくものである。これは当代の好古趣味や異国への関心とおそらく重なっているのだろう。怪談・奇談を、怪異・奇異を信じるか、信じないかだけで考えるべきではないことを教えてくれる、私にとってはありがたいブックレットであった。
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