日本近世文学会が70周年記念に出版した『和本図譜ー江戸を究める』(文学通信、2023年10月)。近世文学の、ビジュアルから「面白さ」を存分に伝えることができる1冊になっている。企画構成にかなり時間をかけた跡が窺える。
前回の50年記念誌は展示図録でもあって、予算もかなり使って、いろいろな逸品の図誌だった。今回は、外に開くということを意識し、若手が意欲的に取り組んだところが特徴だろう。
図譜だから、俗文学の表層を見せるのが中心になる。江戸の印刷・製本のすばらしさ、それは江戸の職人の技術の高さを見せることにもつながる。「へー、こんな分厚い本があるのか」とか「すごい印刷技術」とか、「この仕掛け面白い」とか、読者は何度も楽しめる。
そこから、専門的に深掘りするための案内というか、参考文献を、もう少し載せてもよかったかな、というのは個人の感想である。
「研究のバックヤード」は、近世文学研究に、大きな足跡を残した長老・ベテランへのインタビュー。副題の「江戸を究める」は、この先生方の営為のことでもあるだろう。あえて若手→長老・ベテランのインタビュー形式にすることで、「研究の継承」というコンセプトを打ち出しているように見える。ただ、個別差があって、先生方の口吻が伝わってくるものと、受け止めた側(インタビューした人)の思いが伝わってくるものとがある。録音起こしという手を使わなかったのは、校正の時、先生方にお時間をとらせるからだろうが、対話をそのまま載せる方が、読物としては面白かっただろうな、とも思った。
楽しい本なので、本屋で見かけたら是非お手にとっていただきたい。
2023年12月25日
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