門脇むつみ・芳澤勝弘編『若冲画賛』(朝日新聞出版、2024年3月)。
本の作り方が、ホノルル美術館所蔵レイン文庫『十番虫合絵巻』に校注現代語訳を施した『江戸の王朝文化復興』(私は校注訳を共同担当)と通じるものがあり、非常に共感を持って、頁をめくった。画賛の賛は、展覧会のキャプションでも無視されることが多い。美術史ではあまり重視されていないものだろうか。一方文学研究者も、絵巻や一枚摺には関心があっても、画賛にはなかなか手が出ないのが現状かもしれない・しかし、とくに江戸時代の文藝の性質を考えれば、画賛は、もっとも江戸時代的な芸術(文学)のあり方のひとつだろう。
秋成にも画賛が少なくない。本書に収められている海老図もそうだが、画賛に焦点をあてた研究書が出て、現代語訳・注釈をも備えている形になっていることは、まことに慶びにたえない。「はじめに」を深く頷きながら拝読した次第でである。
本書はながきにわたる研究会の成果だという。全体としては禅僧の賛が圧倒的に多いのは、むべなるかな。芳澤氏が禅学の専門家なので、解説が勉強になる。
2024年03月28日
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