盛田帝子/ロバート・ヒューイ編、盛田帝子・松本大・飯倉洋一校注訳『江戸の王朝文化復興ーホノルル美術館所蔵レイン文庫『十番虫合絵巻』を読む』、英語版は The Heian Culture Revival inEdo:Reading the Jūban-Mushi-awase sxrolls in the Honolulu Museum of Art's Lane Collectionが、2024年3月31日、文学通信から刊行されました。
本書に関わった一人としては、みんなで力を合わせて出来た本だけに、本当に嬉しいですね。ハワイのホノルル美術館に収められている『十番虫合絵巻』は、実に見事に保管されてきた、天明期の歌合・物合の雅びを、紙上再現し、現代人にも読めるように、校訂本文・現代語訳・注釈・英訳・英語注を施したものであります。
147頁までは図版カラー。日本語版263頁、英文版116頁に執筆者紹介を加えて、合わせて380頁超え。この種の本としては、超廉価の本体価格2800円です。構成は以下の通り。
【目次】
まえがき[盛田帝子]英訳あり
はじめに(英語版)[ロバート・ヒューイ]和訳あり
T 本文と解説
影 印
各種凡例
校訂本文・現代語訳・注釈
一番 二番 三番 四番 五番
六番 七番 八番 九番 十番 跋
注釈図版出典一覧
解題──古典知の凝縮された『十番虫合絵巻』の魅力[盛田帝子]
ホノルル美術館所蔵リチャード・レイン・コレクション[南 清恵]
U 論考・コラム
美術史研究から見た『十番虫合絵巻』の作り物[門脇むつみ](英訳あり)
物合と歌合[加藤弓枝](英訳あり)
知識人たちの遊びと考証──十八世紀末から十九世紀初頭の江戸に注目して[有澤知世](英訳あり)
『十番虫合』と『源氏物語』[瓦井裕子](英訳あり)
『十番虫合絵巻』と漢文脈──草虫詩から花鳥画まで[山本嘉孝](英訳あり)
近世期の『源氏物語』本文と橘千蔭[松本 大](英訳あり)
ノスタルジアの歌学──国学と「十番虫合」[ターニャ・バーネット]
長柄橋[ロバート・ヒューイ]
物たちの歌[フランチェスカ・ピザーロ]
数々の虫(Cricket)の〈声〉[ヒルソン・リードパス]
「死の川」の辺りで── 二十世紀日本における木母寺の面影について[ジョナサン・ズウィッカー]
『十番虫合絵巻』の英訳によって失われたもの・そして発見されたものについて[アンドレ・ヘーグ]
『十番虫合絵巻』がハワイの教育にもたらしたもの[南 清恵]
V 付録
人物解題[十番虫合絵巻研究会編]
『十番虫合絵巻』翻刻と校異[翻刻 松本 大・校異 盛田帝子]
類題和歌集との表現の類似[松本 大]
英語版
Introduction / Robert Huey
Introduction / Morita Teiko
T The Main Text, Background, and Commentary
Jūban Mushi-awase
(A Match of Crickets in Ten Rounds of Verse and Image)
Round 1 Round 2 Round 3 Round 4 Round 5
Round 6 Round 7 Round 8 Round 9 Round 10 Postscript:
Jūban Mushi-awase List of Participants by Round
The Appeal of the Jūban Mushi-awase, a Condensed Version of Classical Knowledge / Morita Teiko
The Richard Lane Collection at the Honolulu Museum of Art / Minami Kiyoe
U Research Articles, Perspectives
A Study of Tsukurimono in the Jūban Mushi-awase Emaki from the Standpoint of Art History Research / Kadowaki Mutsumi
Mono-awase and Uta-awase / Katō Yumie
Intellectuals' Pleasures and Considerations: Focusing on Edo at the End of the 18th Century and the Beginning of the 19th Century / Arisawa Tomoyo
Jūban Mushi-awase and The Tale of Genji / Kawarai Yuko
Sinitic Elements in the Jūban Mushi-awase: From Insect Poetry to Bird-and-Flower Painting / Yamamoto Yoshitaka
The Relationship between the Text of The Tale of Genji and Chikage Tachibana in the Early Modern Period / Matsumoto Ōki
The Poetics of Nostalgia: Kokugaku and the Jūban Mushi-awase / Tanya Barnett
The Nagara Bridge / Robert Huey
The Poetry of Things / Francesca Pizarro
The Many 'Voices' of Crickets / Hilson Reidpath
Along the "River of Death": On the Afterimage of the Mokubo-ji in Twentieth-Century Japan / Jonathan Zwicker
Lost and Found in Translation of the Jūban Mushi-awase Scrolls / Andre Haag
What Jūban Mushi-awase Emaki has Brought to Education in Hawaiʻi / Minami Kiyoe
コロナ禍の中で、ホノルル・バークレー・日本を繋ぎ、Zoomで行われた十番虫合絵巻研究会の成果です。ハワイ大のヒューイ先生と学生達と議論することで、私達が日頃考えも付かないアプローチや発想を知ることが出来て本当にありがたかったです。
ちなみに英語版の注や人物解題は、日本語版の訳ではなく英文版独自です(日本語版を参照はしていますが)。
ハワイ大チームの結束力は間を瞠りました。ヒューイ先生以外は、和歌や近世文学の専門家はいませんが、毎回研究会に出席して、英訳を検討した熱意には頭が下がります。研究会で、こーでもない、あーでもないと英訳を検討する様子は、実に粘り強く真摯で感銘を受けたものです。
そして、十番虫合絵巻研究会の成果は、WEBでも公開されました。永崎研宣先生のご指導の下、加藤弓枝さん、藤原静香さんの献身的なご尽力で、すばらしいWEBサイトが出来ました。ぜひご覧ください。 http://juban-mushi-awase.dhii.jp
TEI準拠ファイルに対応した新しい古典籍ビューワで、現代語訳・英訳と対比して閲覧できます。このサイト、とくにビューワの使い方については永崎先生のブログをご参照下さい。サイトから使い方動画(これは開発中の画面を使ってつくったものなので、実際の画面と少し違うところがあります)にもリンクされています。こちらのサイトも日本語版と英語版があります。
さらに、『十番虫合絵巻』は、みやびをテーマとしたホノルル美術館で、展覧されます。4月18日から7月28日まで。どうぞ、ホノルルにいらっしゃる予定の方は、是非覗いてみて下さい!
2024年03月31日
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