斎藤真麻理編『「戯画図巻」の世界』(KADOKAWA、2024年3月)。本当に面白い絵巻である。10本以上の諸本があるというが、その成立時期・画者・注文者・場面の順序・世界観・絵画史上の位置などなど、謎につつまれていて、それがまた面白い。観音様が銃を構えている「スナイパー観音」が話題になっているが、それ以外にも奇想天外な図案が多く、とはいえいずれも教養なくしてその面白さが解らないという知的興趣にみちた絵巻である。
学際的な共同研究で、知り合いの方が多く関わっていることもあり、解説や論考・コラムを興味深く拝見した。
全体の問題点を知るのには、加藤祥平氏の「「戯画図巻」を再考する」が便利だろう。すべての論考コラムが勉強になるが、特に面白かったのは、黒田智氏「江戸の武士と釣りブーム」、井田太郎氏「「狂画」とその周辺」、山本嘉孝氏の「「戯画図巻」をとりまく老荘思想」、門脇むつみ氏の「「戯画図巻」の誕生」、大谷節子氏の「加筆される機知」であった。雅なのか俗なのか、いろいろ呑み込んで、常識を越えて、見るものが教養で遊べる、高度な作品であることが、諸氏の解説でよくわかるし、多くの謎が残されているのが魅力的である。
2024年05月20日
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