国文学研究資料館編『本 かたちと文化 古典籍・近代文献の見方・楽しみ方』(勉誠社、2024年2月)。
国文研で行われていた日本古典籍講習会という催しを書籍化した本。全9章からなる。「はじめての古典籍」「くずし字」「写本」「版本」「装訂と料紙」「表紙文様」「印」「江戸の出版文化」「近代本の世界」。コラムも交えた、古典籍入門というべき本。初心者向けとはいえ、専門家にも十分役立つものとなっている。木越俊介氏のコラム、「国書データベースで複数の画像を比較するには」は、画像上で、たとえば東洋大学哲学堂文庫の本と、国文学研究資料館の本の同じ丁の版面を比較したいときに、どうやればいいかが簡単に説明されている。IIIF(トリプルアイエフ)準拠で、諸本比較ができることは知っていても、され具体的にはどうすればいいの?何を見ればそれがわかるの?と思っている人は案外専門家でも少なくないのではないか。そんな時にはこのコラムを読めば、すぐにわかります。
書誌学というものは、元来原物を前に教えていただくものであるから、もちろん隔靴掻痒の部分があることは仕方がない。実際には、副読本という位置づけになるだろう。ただ本書はモノクロだが、電子版ではオールカラーだそうで、半額クーポンが挟まれていた。とまれ、古典籍を実際に扱う人は、座右に置いておいたらよいのではないか、そう思わせる本である。
2024年05月21日
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