2024年06月13日

詩歌交響 

 楊昆鵬『詩歌交響 和漢聯句のことばと連想』(臨川書店、2023年2月)。
 刊行されたのは1年4ヶ月前。ここに取り上げることになったのは、少し前に『後陽成天皇』という論集を紹介したが、それを読んだ本書の筆者の楊さんから、その本に収められている和漢聯句の章は、後陽成天皇の和漢聯句活動の一部で不完全なものなので、それを付け加えた完全版を読んでほしいと言って、わざわざ送って来られたことによる。
 たいへん恐縮してしまい、簡単なお礼状を書いたのだが、「和漢聯句」は日本文学の中でも、かなり難解で知識教養を必要とするジャンルで、そう簡単に読み進められるものではない。
 「後陽成天皇の和漢聯句と聯句」と題する章は、本書の最後に位置する。たとえば和漢千句興行を四回も主催したことは空前絶後だそうで、後陽成天皇は和漢聯句に熱心であった。この豊かな文学的な実りを見事に収穫し、それをわかりやすく提示した章となっている。日記類を駆使して、その実態を叙述し、合わせて和漢聯句の興行の仕方を伝え、なおかつ句について、詳細に注釈・解説していく。そこに天皇の機知・教養とセンスの良さを見、さらに政治性(政治的題材)を手がかりに、作風の変化に及ぶ。
 考えてみれば、中国に生まれて、日本で文学を学んだ方に、「和漢聯句」という研究テーマはあまりにもぴったりである。名古屋大学大学院で塩村耕さんに学び、京都大学大学院で大谷雅夫さんに学んだことも、素晴らしい師との出会いだっただろう。論述の学問的な確かさに厳しい指導が透けて見える。 
 ちなみに楊さんは「聯句」を「れんぐ」と読ませているが、古くはそう読んだと辞書にもある。「れんく」となるのは、どのあたりからなのだろう?
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